法のくすり箱


、私は会社員ですが、先年妻の父が商売の資金800万円を銀行から借り受ける際に妻にせがまれて無理に連帯保証人にさせられました。昨年義父は病気で返済ができなくなり、銀行の借金は信用保証協会が肩代わりしてくれましたが、私は協会への保証人となった覚えはないのに協会からの返済の要求があり困っています。保証人をやめられる方法はないのでしょうか?


「連帯」保証人の責任は借金をした本人とほぼ同様に重いものです。債権者がいきなりあなたに請求してきても、単なる保証人のように、まず本人へ請求してくれ(催告の抗弁権)、本人にはしかじかの財産があって容易に執行できるからまずそちらにかかってくれ(検索の抗弁権)と抗弁することができません。したがって連帯保証人になるからには、それだけの金を自分が直接借りたと考えるくらいの覚悟が必要です。
 そして、連帯保証人をやめることは、債権者が承知しないかぎり無理です。本人が借金を返済するか、誰か他の者が本人の借金を弁済するかするまでは、あなたは保証責任を免れません。あなたが強迫によって無理に連帯保証契約を結ばされたというなら取消し(民法96条)もありますが、このケースでは、「無理に」といっても奥さんから泣きつかれたという程度でしょうから、まずその余地はありません。
 また、信用保証協会は銀行に代わって債権者として請求しています。保証人としての債務は銀行から信用保証協会に引き継がれて続くのですから、あなたとしてはこれを否認することはできません。
 そこで今のあなたとしては、債務をゼロにできないまでも、極力将来の負担を軽減するための手段を考えていくほかありません。たとえば、(1)あなたのほかにも連帯保証人・物上保証人(抵当物件を出してくれる人など)をつくる、(2)あなた名義の不動産があればその名義を他に移しておく(ただし詐害行為の問題は残る。また究極には会社給料の4分の1等の差押えは免れない、民事執行法152条・施行令2条)、(3)妻が父からできるだけ生前贈与を受けておくようにしておき、父の相続時に債務超過の状態であるときは相続の放棄を行う、など。ただ、信用保証協会の場合、その活動には公益性の配慮があり、その取立てはきびしいの一点張りではないはずです。あなたの支払いについても、時期・返済の回数方法等相談にのってくれますので、誠意をもって、少しずつ返済していくことをまず考えて下さい。

〔連帯保証人〕
 保証人には、連帯保証人と「連帯」の2字のつかない普通の保証人とがある。たとえば、金の貸し借りで、貸主に対して保証人になったとする。普通の保証では、保証債務は主債務(借主の債務)を補充するものであり、貸主がいきなり保証人のところへ請求してきたときには、本文に述べたようにまず借主に請求するようにと抗弁できる。しかし連帯保証人はそれができない。また普通の保証人が数人いるようなとき(共同保証)、各保証人は貸主に対して保証人の頭数で債権金額を割った額だけ払えばよい(分別の利益)。しかし連帯保証人は数人いても、各自が全額を貸主に支払う責任がある。この場合、弁済をした連帯保証人Aは、貸主に代わって借主に対して支払請求権を行使できるが(民法500条)、さらにAは、他の連帯保証人に対しても求償(他に2人連帯保証人B・Cがいたとすれば、普通、B・Cに対して各3分の1ずつ求償)できる。
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〔信用保証協会〕
 信用保証協会法に基づく公益的な特殊法人。各都道府県および5市(横浜・川崎・名古屋・岐阜・大阪)に設置されている。中小企業主が銀行などから貸付を受ける場合に十分な保証人を立てようとしてもこれができないことが少なくない。そこで信用保証協会が保証人となって右貸付を受けやすくしてやる。金を借りた中小企業主が返済義務を怠った場合には協会は保証債務の履行として銀行に支払い(代位弁済)、これによって借主に対する求償権を取得し、代位弁済額の回収をはかる。                  
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