法のくすり箱
Q、私は運送会社でパートで働いています。先日、得意先へ配達をしての帰路、マンションの階段でころんで右足の関節を複雑骨折しました。医者の話では、気の毒だが完治はむずかしく後遺症が残るということです。労災保険という制度があるそうですが、私にも適用があるのでしょうか?
A、むろんあなたのようなパートタイマーにも適用があります。
労働者が、仕事をしているときに(業務遂行性)、仕事によって(業務起因性)、けがや病気になったり、死亡したりすることを労働災害といいます。このような場合に、あらかじめ使用者が保険料をかけ、労災にあった労働者(被災者)に補償をする制度が労災保険制度(労働者災害補償保険)です。労働者を1人でも使用していれば、事業をはじめたその日から、自動的に労災保険に加入したことになっており(強制適用)、パートでも、正社員でも、労働者であれば誰でも労災補償を受けることができます。
労災保険法によれば、業務災害に関する保険給付としては、[1]治療費(療養補償給付)、[2]休業補償給付(治療に必要な休業期間である限り平均賃金の6割が打ち切ることなく支払われる。労働災害に認定されることの大きな利点)、[3]後遺症の給付(後遺障害の重い場合は年金、軽い場合には一時金で支払われる)、[4]傷病補償年金(療養期間1年半を経過しても治癒しない場合で、負傷等による障害が一定の程度にあると認められたときに支払われる)のほか、被災者死亡の場合の給付である、[5]葬祭料、[6]遺族補償給付(年金、一時金)、[7]介護補償給付(一定の重い障害があり、自宅などで常時または随時介護を要する場合に支給)があり、きわめてきめこまかい周到なものとなっています(法12条の8)。
労災保険を請求する手続きですが、労働基準監督署にある労災保険請求書に災害の発生状況など所定の事項を記入し、医者の証明と使用者の証明とをつけて労基署へ提出します。使用者は、労災を認定されると、その後の労災保険料の率が高くなるので、たちの悪い事業所の場合、証明の義務があるにもかかわらず、労災ではない、保険に入っていないなどと言を左右にして証明書を出さないことがあります(いわゆる「労災かくし」)。
しかし、労災の補償は治療費だけでなくきわめて手厚いことはすでに述べたとおりです。労災かくしがあっても、証明書なしで労基署に請求書を出してみてはいかがでしょう。労基署は、職場で調査して、労災にあたれば保険給付をしてくれます。ただ、そのときには、あなたは、労災かくしをする使用者との間の関係が気まずくなるのをやむをえないと、敢然覚悟してかかる必要がありますが、それは当然のことですね。

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