[1992(平成4)年8月1日以降の新しい契約には、全面的に新「借地借家法」が適用されます。しかし、それ以前から成立していた契約には、その権利の存続について、旧「借地法」・旧「借家法」が適用されます。本文中、イタリック(斜字)で記した部分は、旧法が適用される古い契約には該当しないのでご注意下さい。]

法のくすり箱
Q、ビルの貸店舗で商売を始めようと思います。ビルの所有者は、「備えつけの家具やケース・備品などを付けて貸すかわりに、売上げの5%を家賃として払ってほしい」と言いますが、このような場合でも借地借家法の保護は受けられるのでしょうか?
A、貸店舗では、契約内容によって借地借家法(旧借家法)の保護に関し法的に大きく違ってくることがあるので気を付けてください。
ひとつは、純然たる店舗賃貸借です。使用者が一定の場所を占有して場所使用の対価として賃料を支払い、その場所を自由に独立の立場で使用しているとみなされるもので、これには借地借家法(旧借家法)が適用されます。解約申入れの期間(借地借家法26・27条、旧借家法2・3条)・明渡しの正当事由(借地借家法28条、旧借家法1条の2)・借賃の増減請求(借地借家法32条、旧借家法7条)などの点で借主は法的に強く保護されることになります。
もうひとつは、営業委託・利益分配契約とみなされる場合です。店舗使用者(借主)は売上げの一定割合を営業委託者である建物所有者に支払うと同時に、そのことで営業上貸主に従属しており、借主による場所の占有支配も弱いと判断されますと、もはや借地借家法(旧借家法)の保護はなく、貸主はいつでも営業委託契約を解除して借主に対し店舗からの立ち退きを請求できることになります。
この2つの形態は具体的には次のような基準で判断されます。(1)営業名義はどちらか。(2)営業の指示・監督権を貸主が有するか。(3)経費はだれの負担か。(4)売上げ責任額の定めがあるか。(5)借主の納めるお金が場所使用の対価(家賃)にあたるか、営業や労務に対する対価(利益分配など)にあたるかなどです。実際にはこれらの要素がさまざまに入り混じっていることが多く、デパートやスーパーマーケット内の出店など一見して同じように見えても、契約内容は個々に違っています。そこでこれらの基準から総合的に判断されることになります。あなたの場合も、まず、契約内容をよく確かめてください。
もしあなたが、自由に営業ができ借地借家法も適用される賃貸借をお望みなら、少なくとも営業名義・営業許可名義は必ずあなたのものとすることです。さらに営業をあなたの責任と判断で独立してできるようにする必要があります。家賃についても、定額・売上げの歩合制どちらでもかまいませんが、ただ、歩合制にした場合は最低限度の基本家賃を必ず決め、それに売上げにスライドしたものを支払うという形にして、完全な店舗賃貸借契約とするよう交渉すべきです。その際、あなたの方から家賃の最高限度を決めるよう申し出ることももちろん可能です。いずれにせよ、上記のように、最低賃料が決められ営業上の独立性が確保されるように契約すれば、お尋ねのようなケースにおいても借地借家法の適用が認められることになります。

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