法のくすり箱


Q、私は友人に50万円貸し、その担保としてダイヤの指輪を預かりました。その際、友人は私に、「期限が過ぎてお金を返さなかったときはあなたが指輪をもらってほしい」と申入れ、私は承諾しました。大丈夫とは思いますが、もしお金を返してくれなかった場合、約束どおり指輪を処理してもよいのでしょうか?


、担保とひと口にいっても、(1)代物弁済の予約(借金を返さなかった場合には弁済のかわりに指輪を進呈する)、(2)質権設定(指輪を質物としてお金を返すまで預かる)、(3)譲渡担保(担保として指輪を譲渡するがお金を弁済すれば返してもらう)など、さまざまなケースが考えられますが、いずれにせよ、お金を返してもらうまでは、指輪を友人に返還する必要がない点は共通です。
このケースでは、(1)の代物弁済の予約の合意がなされたとみるのが自然です。その場合には、あなたは、返済期限が過ぎたために(代物弁済によって)自分のものになった指輪をどのように処分されるのも自由です。
 しかし、お金を貸し借りするときに、「それでは担保にこの指輪を預ける」という程度でそれ以上ことこまかに詰めないことも少なくありません。このような場合には、あなたと友人との間で(2)の質権設定契約があったにとどまると解されます。この場合、民法では、質権設定の際にあらかじめ「債務不履行の場合、質権者が質物の所有権を取得する」という契約(流質契約)をすることを禁止しています(349条)。ですから、期限が過ぎても友人がお金を返さなかったときに、あなたはそのまま指輪を自分のものにすることはできません。もっともあなたが、この段階で改めて借金の「かた」に指輪をもらう旨友人に申し入れて友人が承諾すれば、これは流質契約の禁止にふれませんからそれも一つの解決です(しかし、原則としては面倒でも法的な質権実行手続きによるほかありません。a)裁判所に指輪の競売を申立て競売代金の中から弁済を受ける。または、b)裁判所に指輪を鑑定してもらいその価格で貸主が引き取る簡便な方法(354条)によることになります)。
 そこで、お金が返らないときの煩わしさを考えれば、先に「それでは担保にこの指輪を預ける」と友人が言ったとき、あなたはがんばってもう一言、「それでは期限が過ぎたらこの指輪をもらってほしいということか?」と念を押して(この際、あなたの方からほしいと言ってはいけません)、「そうだ」との友人の任意の承諾により、この契約を(1)の代物弁済の予約に持ち込むことが心得ごとです。
ちなみに前記(1)代物弁済、(3)譲渡担保の結果として指輪を取得する場合に、指輪の価値と借金の差額があまりにも大きいときには(裁判例では2倍や2倍弱の場合)、相手方(友人)はこれを清算すべきことを要求する権利があるので、あなたはその差額を友人に返還しなければなりません。

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