
法のくすり箱
Q、先日コインロッカーの鍵を落としてしまい、マスターキーで開けてもらったところ、中の品物はすでに盗られたあとでした。そのうえ鍵を取り替える必要があるとお金を請求されました。この場合、利用者は弁償もしてもらえず、すべて我慢しなければならないのでしょうか?
A、コインロッカーを利用するということは、法的には保管の場所としてロッカーを提供する賃貸借契約を結んだと考えられ、その約款(契約の取決めの一つ一つの条項)は、通常ロッカーの横やその近くに掲示されています。その約款の中には、たとえば「貴重品・動物・爆発物などの危険物・銃刀剣類・臭気や腐敗のおそれのある不潔なもの・その他ロッカーに保管するのに適さないもの」などと収納できないものが列挙されているはずです。
ここで注意が必要なのは、貴重品を収納できないとしている点です。つまり、コインロッカーは単なる携帯品の一時的な保管場所を提供したものにすぎず、物の保管を引き受ける寄託契約や、銀行などの貸金庫のように安全な場所を提供する目的の賃貸借契約とは異なります。寄託契約では保管品に対して責任を負いますし、貸金庫契約では本人への無断開扉はたとえ家族でもできないしくみになっており、その限りで賠償責任を負います。しかし、コインロッカーでは使用期間は4日以内と定められ、それ以後はもちろん、それ以前でも無断開扉の制限はきわめて緩やかです。
そして約款では通例、「鍵の紛失・盗用、天災等の不可抗力、使用者の誤用、官公署の押収」などによる保管品の滅失・毀損については責任を負わない旨が明記されています。したがって、あなたの場合は鍵の紛失による盗難ですから責任はすべて利用者にあると考えられ、錠装置交換費も当然支払う必要があります。もしうかつにも貴重品を中に入れてしまった場合は、警察に盗難届を出して捜査してもらうより致し方ないようです。
ただ、貸主の責に帰すべき事由による場合、たとえばロッカーの鍵が壊れていたとか、マスターキーを盗まれたために保管品が滅失したようなときには、貸主はもちろん損害賠償の責任を負います。

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