[1992(平成4)年8月1日以降の新しい契約には、全面的に新「借地借家法」が適用されます。しかし、それ以前から成立していた契約には、その権利の存続について、旧「借地法」・旧「借家法」が適用されます。本文中、イタリック(斜字)で記した部分は、旧法が適用される古い契約には該当しないのでご注意下さい。]

法のくすり箱
Q、借地に木造2階建ての建物を建てて商売をしています。借りた当時は住宅地でしたが、最近では周囲にビルが立ち並ぶようになりました。建物も古くなったので、この際、鉄筋コンクリート造りに建て替えたいのですが、どうすればよいでしょうか?
A、多くの場合、借地契約書には、無断増改築禁止の特約条項がつけられています。あなたの場合もおそらく特約があると思われますので、木造であれ鉄筋であれ地主の承諾や後述の裁判所の許可なしに無断で建て替えますと特約違反になり、地主から契約を解除されるおそれがあります。もっとも契約上増改築を禁止する特約がなかったときには、これまでと同じ木造2階建ての建物ということであれば、原則として借地人は増改築してさしつかえありません。しかし、鉄筋コンクリート造りの建物などの堅固建物を建築するのであれば、それは非堅固建物(木造など)の所有のための土地賃貸借契約の目的範囲をこえることになります。そこで改めて地主の承諾が必要であり、無断で建て替えるとあなたは用法違反を理由に借地契約を解除されるおそれがあります。
しかし、どうしても話合いがつかず地主の承諾が得られない場合には、次にあげる一定の事情があるときには、無断増改築禁止の特約の有無にかかわりなく、裁判所に申し立てて、借地条件変更許可の裁判をしてもらうことができます(借地借家法17条1項、旧借地法8条ノ2第1項)。すなわち、(1)防火地域の指定がなされている場合、(2)付近の土地の利用状況が変化し、住宅地だったのが商業地となったり、木造の建物が多かったのがビルが増えてきたような場合、(3)その他の事情の変更があった場合、これはたとえば準防火地域の指定や改良地区の指定などの客観的事情が該当します。この場合、借地人側の主観的事情(借地人の家族数が増加したり、隣人がビルを建築したため日照・通風が悪くなったなど)を含むかどうかが問題になるところですが、含ませてよいという考え方が有力です。
あなたの場合は、(2)に該当すると思われますので、裁判所へ借地条件変更許可の裁判を申し立てればよいでしょう。裁判所は、借地権の残存期間・土地の状況・借地に関する従前の経過・その他の事情を考慮して、堅固建物の許可するか否かを決定します。
ところで許可する場合ですが、契約条件が変更されることによって借地権は借地人に有利なものとなり、それだけ地主は経済的に損失を受けることになるわけですから、裁判所は必要に応じて地代改訂などの借地条件の変更・財産上の給付(金銭の支払いのことで、だいたい更地価格の10%程度)・その他相当の処分(建築されるべき建物の位置や規模・構造を規制)を命ずることができます(同第3項)。
なお、新借地借家法では、堅固建物と非堅固建物の別によって借地期間を区別していません(一律30年以上、新法3条)。しかし、建物の種類・構造・規模・用途を制限する旨の借地条件が付いていて、その変更について地主の承諾が得られない場合には、やはり裁判所の許可をとることになります。

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