法のくすり箱
Q、私はウィークデーには毎日時給800円、1日6時間のパートに出ております。現在2年目にあたりますが、先日、年休をとりたいのでその旨を申し入れたところ、会社は「この忙しいときに休まれては困る」と文句を言い、とることができませんでした。パートの年休はどうなっているのでしょうか?
A、労働基準法では、(1)半年間継続して勤務し、しかも(2)労働日数の8割以上出勤した労働者であれば、そのあとの1年間に10日間の、そしてそれ以降1年たつごとに1〜2日ずつ加算した有給休暇(年休)を最高20日までとることができると規定しています(法39条1・2項、表[1]参照)。この労基法の定めは、正社員のみならず、1週間の所定労働時間が30時間以上のパートタイマーや臨時・嘱託などの労働者にも適用され、その賃金が時間給や日給であるかも問いません。また、1日の労働時間は短くとも、週5日労働のパート、あるいは年間所定労働日数が217日以上のパートであれば、正社員と同様の年休が保障されています。そしてあなたの場合、週5日・30時間労働ですから、当然、表[1]が適用され、パート2年目の前半であれば11日、パート2年目の後半であれば12日の年休をとることができます。
表[1] 年次有給休暇の付与日数
勤続 年数 |
6ヶ月 |
1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年 6ヶ月 以上 |
年休 日数 |
10日 |
11日 |
12日 |
14日 |
16日 |
18日 |
20日 |
ちなみに、1週間の所定労働時間が30時間未満で、しかも週4日以内の労働、または年間所定労働日が216日以内のパートについては別の規定がおかれ、表[2]のような年休付与日数となっています(法39条3項、規則24条の3)。
表[2] パートタイマーの年休
週 所定 労働 日数 |
1年間の 所定労働 日数 |
勤 続 年 数 |
6ヶ月 |
1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年 6ヶ月 以上 |
4日 |
169日 〜216日 |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
3日 |
121日 〜168日 |
5日 |
6日 |
6日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
2日 |
73日 〜120日 |
3日 |
4日 |
4日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
1日 |
48日 〜72日 |
1日 |
2日 |
2日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
次に、あなたが「忙しい」ということで会社に断られた点ですが、年休は労働者の休息する権利を具体化したもので、いつとるかは労働者の自由ですし、何に使うかもまったく自由であるとされています。「いつからいつまで年休をとります」といえば、その利用目的をいう必要もありません。ただ特別の場合には、使用者は別の日にするように求めることができます。すなわち、「事業の正常な運営を妨げる場合」(法39条4項)に限り、使用者は時季変更権を行使できます。これは事業所を単位としてみて、仕事の内容・忙しさ・代わりの人がいるかなどいろいろな事情を考慮して、別の日にするように求めるか、申し出の日に認めるかを使用者が判断します。したがって、このように判断されるようなタイミングでの休暇申入れは認められないこともあります。
しかし、使用者がこの時季変更に係る事情をあなたに説明して別の日への振替えを求めることもなく、ただ単に漫然と「忙しい」「人手が足りない」というのであれば、あなたの正当な権利の行使が阻害されていることになります。この場合、もし「○月○日に年休をとります」といって休み、その結果賃金をカットされたら、労基法違反となりますので、あなたは労働基準監督署へ行って使用者に対する指導・勧告をしてもらうことも可能です。
しかし、そのような手段は、一方で職場での人間関係を悪化するおそれもあるでしょう。あなたとしては、まず、認められない事情をよく説明してもらい、納得いかないものならば、有給休暇の権利性について会社の関心を高め認識を改めさせる努力を重ねる必要があります。また、会社に組合その他の従業員組織があれば、そこに申し入れて善処を促すことも賢明な方法といえるでしょう。

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