法のくすり箱
Q、後は挙式を待つのみという段階で、男の母親の非常識についていけないと思う事態が生じました(嫁入道具を先方へ送り、荷解きに行こうとすると、先方の母親が仲人を通して「疲れているので今日は困る」といってきた。そこで日を改めて荷解きに行ったところ、荷物は開かれ散乱しており母親は「私はそんなことをいっていない。寝るところもなく迷惑している」と文句をいわれた)。またその後電話一本かけてこない男にも失望し、婚約解消を申入れました。すると相手は結納金の倍返し、婚約指輪の買取り、式場の予約金の負担などを請求してきました。どうしたらよいのでしょうか?
A、結納とは、婚姻成立のしるしとして婿方から嫁方へ(所によってはさらに嫁方から婿方ヘ)贈られる金銭等のことで、最近では指輪・腕時計・その他の装飾品などが贈られることも少なくありません。
法律的には結納は解除条件付贈与と解されており、原則的には婚約が解消となった場合にはもとの所有者に返さなければなりません。しかしながら婚約解消責任が結納を渡した側にある場合は、その者からの返還請求は認めないことになっています(奈良地裁判決昭和29年4月13日)。あなたの場合、おそらく相手方は、 正当な理由なしに婚約を解消されたとして請求してきているのでしょうが、婚約を解消せざるを得ないように追い込みその本当の原因をつくったのが相手なら、相手の要求に一切応じる義務はなく、結納金のみならず婚約指輪といえども、あなたが返したくないと思うのならば返還する必要はありません。
これは式場予約金などの財産的損害に対する賠償請求についても同じで、相手の請求に応じる必要はありません。むしろあなたの方が婚約解消の原因をつくった相手方に対して、これまでの結婚支度に要した費用の請求、ひいては精神的苦痛を味わったことに対する慰謝料を請求できる立場にさえありますので、心配せずに、そのことを伝えて相手方の出方を待ちましょう。
ただ、ご質問からは相手方に一方的に非があるというふうにうけとれましたが、当事者双方に責任がある場合は(それぞれの責任の程度にもよりますが)、結納金に関しては全部ないし一部を返還するのが妥当でしょうし、婚約指輪は返還するのが実情に適うように思われます。ところで結納金についての判例は、双方の責任を比べてみて結納を渡した側の責任の方が受け取った側の責任よりも大きい場合は、渡した側からその結納金の返還を請求することはできないとしています(福岡地裁小倉支部判決昭和48年2月26日)。

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