予防法務ジャーナル「そよ風」▲水道等をひくために隣家の私道を通したい▼

法のくすり箱

Ｑ、私の家に、水道・ガス・下水管をひきたいのですが、他人の私道を通さなければなりません。私道の所有者に通させてくれるよう頼んでいますが、もし、承諾が得られない場合は水道・ガス・下水管をひくことはできないのでしょうか？

Ａ、承諾が得られる場合には、下水管等を敷設できることはもちろんですが、もし、承諾が得られない場合でも、下水管は下水道法１１条「排水に関する受忍義務等」により敷設が認められています。

　ところが、水道法・ガス事業法には、下水道法のような規定がありません。このため、もし、承諾を得られないために水道管やガス管を敷設できなければ、日常生活に重大な支障をきたすことになります。しかし、水道・ガス・下水管は、今や、現代都市生活において、必要不可欠なものであり、これらの設備がなければ最低限度の健康で文化的な生活が否定されるのと変わりがなくなります。

　そこで判例は、このような場合に、民法２１０条～２１３条に規定されている相隣関係（そうりんかんけい＝隣接する２個の所有権相互間の法律関係。隣人同士の通行・排水・境界・観望などの問題を合理的に調整するための規定が民法２０９条～２３８条におかれている）や下水道法の規定を類推解釈し、承諾が得られない場合でもガス管等を敷設することができるものとしました（神戸簡裁昭和５０年９月判決等）。

　もっとも、他人の私道にガス管等を敷設するときは、もっとも損害の少ない部分および方法を選び、費用は自己負担で、また、私道所有者に損失を与えた場合はその補償をしなければなりません。

　日常の隣近所とのつきあい方によっては、トラブルを回避できることもあります。お互いに普段から心がけましょう。

民法第２１０条〔囲繞地通行権〕　或土地カ他ノ土地ニ囲繞セラレテ公路ニ通セサルトキハ其土地ノ所有者ハ公路ニ至ル為メ囲繞地ヲ通行スルコトヲ得
(2)　池沼、河渠若クハ海洋ニ由ルニ非サレハ他ニ通スルコト能ハス又ハ崖岸アリテ土地ト公路ト著シキ高低ヲ為ストキ亦同シ

第２１１条〔同前〕　前条ノ場合ニ於テ通行ノ場所及ヒ方法ハ通行権ヲ有スル者ノ為メニ必要ニシテ且囲繞地ノ為メニ損害最モ少ナキモノヲ選フコトヲ要ス
(2)　通行権ヲ有スル者ハ必要アルトキハ通路ヲ開設スルコトヲ得

第２１２条〔同前〕　通行権ヲ有スル者ハ通行地ノ損害ニ対シテ償金ヲ払フコトヲ要ス但通路開設ノ為メニ生シタル損害ニ対スルモノヲ除ク外一年毎ニ其償金ヲ払フコトヲ得

第２１３条〔同前〕　分割ニ因リ公路ニ通セサル土地ヲ生シタルトキハ其土地ノ所有者ハ公路ニ至ル為メ他ノ分割者ノ所有地ノミヲ通行スルコトヲ得此場合ニ於テハ償金ヲ払フコトヲ要セス
(2)　前項ノ規定ハ土地ノ所有者カ其土地ノ一部ヲ譲渡シタル場合ニ之ヲ準用ス

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