
法のくすり箱
Q、私は内縁の夫と借家生活(夫名義)をしていましたが、先日、夫が脳卒中のために急死しました。その後、先妻の子が相続人として借家権を主張し、明渡しを要求してきます。私は要求どおりこの家を出ていかなければならないのでしょうか?(私と夫との間には子供はいません)
A、内縁の妻には相続権がありません。そして借家権は相続の対象となりますから、あなたが当然に自分のものだとはいえないのです。しかし、これでは全く内縁の妻の居住権というものが無視されたことになり、あまりに気の毒であるという見地から、借主に相続人がいない場合であれば、内縁関係にあった者が借家権を承継できることになっています(借地借家法36条、旧借家法7条の2)。
ところが、あなたの場合のように、相続人がいる場合に関しては法律上何も規定がなく、裁判上の争いとなったときに明け渡す必要があるかどうかは当事者の事情によって決まっているようです。つまり、本来なら先妻の子は相続人で当然借家権があるわけですから内縁の妻に出ていけと言える立場にあり、明渡しが認められると考えられます。しかしながら、いくら権利があるからといっても、その借家を使用すべき差し迫った必要もないような場合は、権利の濫用に当たるとして明渡しが認められないことがあります(昭和39年10月13日最高裁判例)。
ご質問からは先妻の子の生活状態はわかりませんが、もし独立別居して生活を営んでいるのであれば、正当事由がないということで明渡しは認められないでしょう。
ちなみに、家主との関係ですが、居住の保護という立場から、学説・判例では、死亡した借主である夫に相続人である子がいる場合でも、内縁の妻は居住を継続できるとしています(昭和42年2月21日最高裁判例等)。

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