法のくすり箱


、咋夏友人に30万円を貸したのですが、急に入用ができて返して欲しいと言ったところ、居留守を使ったりして一向に返してくれません。友人とのことですので返済期限も決めませんでしたし、借用証も一切とってありません。どうすれば返してもらえるでしょうか?

貸金を返してもらうためには、最初から裁判所の手を借りる強行手段(訴訟・支払督促)もありますが、友人相手の場合であれば、いきなりこうした法的手続きをとることは穏当といえないでしょう。
 そこでまず、個人として借主に返還を申入れてみるべきだと思われます。口頭、手紙、どんな手段でも構わないのですが、後で、聞いた聞かないの水掛け論とならないためには、内容証明郵便を送るというやり方はいかがでしょうか。内容証明郵便とは、郵便局で指定された一定の用紙(タテ20字×ヨコ26行の市販されている罫紙でよい)に一定の方式で記載して局の窓口に出しますと、いつ・誰が・誰に対して・どんな内容の返還申入れをしたかが証明されるという郵便です。この際、「配達証明付で」と申し出られると配達された日が証明されますので、相手側が受け取ったかどうかの心配も解消されます。
 さて返還申入れの内容ですが、貸した日時・金額を明示した上で「相当の期間を定めて」(民法591条)返還の要求をすることになります。この期間については、借主の資力というような事情は考慮する必要はなく、返還に必要な取引上の期間ということで10日乃至2週間で充分でしょう。もしこれが後で「不相当な期間」だとされても、催告そのものは有効ですので心配はいりません。この期間をすぎると借主は延滞利息を支払わねばならないことになります(法定利率は年5分、民法404条)。
 こうして返還を申入れて、しかも相当の期間をすぎてもなお支払いが行われない場合には、ついに裁判所の力を借りねばならないことが起こるかも知れません。そのときに、友人が借金を認めればともかく、「知らない」「もらったものだ」「以前貸した金を返してもらったのだ」等と主張された際には証拠となるものが非常に重要になります。借用証もないとのことですが、金銭貸借に立ち会った証人はいないでしょうか?但し、証人といえどもよほど信用のおける人でなければ、証言が矛盾したり、相手方と通ずるというようなことも考えられますので御注意下さい。その他、金銭貸借に関連した友人からの礼状や催促への返事はないでしょうか?しかしこの場合も、漠然とした「感謝します」「もうしばらく御辛抱下さい」等の内容ではなく、金をいくら借りたかについてできるだけはっきり書かれていることが望ましいのはもちろんです。今からでも遅くはありません。借主から念書をもらうことはできないでしょうか?
 ところで、適当な証人も証拠もなく、もはや相手方の良心に委ねる他ないという場合もあることでしょう。一般に友人間での物や少額の貸借においてはわざわざ借用証など書かないことも少なくありません。そこには通常強い信頼関係があり、「訴訟をしてまで取り戻そうとは思わない」「絶対に返そう」とのお互いの思いがあるわけです。これを踏みにじった相手に対しては、それ以後、その相手方が社会的信用を失うことで納得し、相手の人格を見損った点を反省することで満足するしかありません。残念ですが潔くあきらめ、次回からの教訓として、はっきりと借用証をとっておくか、さもなければ「返ってこなくて元々」の気持ちで余裕のある範囲で貸すことにすべきでしょう。


[支払督促]
 債権者からの一方的な申立に基づいて裁判所が債務者に出す命令。
 訴訟に比べ取り立てが簡単・迅速に行える。ただし、金銭の支払いや有価証券・一定の品質のものの交付を求める場合に限られ、土地や建物の明渡し等はできない。
 その手続きであるが、まず債権者は、債務者の住所地の簡易裁判所に支払督促申立書を提出。これに応じて裁判所から債務者に対して「送達の日から2週間以内に異議を申立てないときは債権者の申立によって仮執行の宣言をする」という警告つきの文書(督促命令)が出される(この2週間の期間内に債務者が異議申立をすれば訴訟に移ることになる)。
 2週間たっても異議申立もなくしかも債務が支払われないときは、債権者は簡易裁判所に今度は仮執行宣言申立書を提出(もし債権者がこの申立を30日間しないで放っておくと、督促命令は効力を失う)し、これにより裁判所から債務者に仮執行宣言付督促命令が出される。
 これが届いて2週間以内に債務者が異議申立をしなければ、督促命令は確定判決と同じ効力をもつことになり、本執行(強制執行)が行われる。
(民事訴訟法382〜397条)
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[内容証明郵便]
 いつ、どのような内容の文書を、誰から誰へあてて差し出したかを、郵便局が証明する郵便。差し出した文書の内容を、後日の証拠として残しておく必要のあるときに利用される。配達証明を付けるとより確実となる。
 内容証明用紙(タテ20字×ヨコ26行、市販されている)を用いて、同文の手紙を3通(受取人・差出人・郵便局保管用)作成し、郵便局の窓口へ、差出人・受取人の住所・氏名を明記した封筒(開封のこと)とともに提出する。その際、捺印・訂正印もれなどがあるので、差出人の印を持参した方が無難。証明料は、配達証明料300円、内容証明料謄本1枚420円(1枚をこえ1枚増すごとに250円増)、書留料金420円、通常郵便料金(定形25gまでなら80円)の合計となり、最低1220円よりとなる[平成12年11月現在]。
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