法のくすり箱
Q、私は外に女性をつくって家を出た夫と2年間の別居期間を経て後、1年前に家庭裁判所で調停離婚しました。そのとき10才の女児を私が引き取り、夫は子供が成人するまで毎月5万円の養育料を支払うということを決めましたが、初めの3ヶ月間送金してくれたきりであとは全然支払ってくれません。なんとか支払わせる方法はないのでしょうか?また離婚までの別居の間にかかった養育料等は請求できないのでしょうか?
A、あなたの場合、調停離婚をされており、離婚に際して家庭裁判所では、子供の養育料、その支払いの時期・方法等を定めた調停調書が作成されています。この調書は、その養育料の支払、その他財産上の給付について定めた部分については、確定判決同様当事者を拘束する効力がありますから(家事審判法21条)、民事執行法に基づいて立派に強制執行ができるものであることを、まず知っておいて下さい。
しかし家事債務は、一般に価額も少なく、手続が煩雑で費用のかかる強制執行の手続きを権利者にさせるのは酷であるとの配慮から、次のような特別の措置が認められています。
すなわち、あなたが離婚調停をした家庭裁判所に対し延滞している養育料を支払うよう申立てをすれば、これを受けて家庭裁判所は独自に調査を行ない、事実を確認したうえで相手に支払を勧告したり(履行勧告、同法15条の5)、過料の制裁の下に相手に相当と思われる期間を定めて支払を命じたり(履行命令、同法15条の6)してくれます。これらは 「家事債務の履行確保制度」といわれ、家庭裁判所がその調停や審判できまった義務の実現をはかる制度です。
また、離婚調停は成立したものの、はじめから相手方の支払が危ぶまれるようなときには寄託の制度があり、毎月の養育料等を家庭裁判所に振込んでもらい、家庭裁判所から改めてあなたに支払ってもらう方法をとることもできます。これは家庭裁判所を通じることによる心理的な強制効果を期待しようとするものです(同法15条の7、25条の2)。
しかし、履行勧告や履行命令に対してさえ相手が従わないときは強制執行の手続で取りたてるほかありません。すなわち、調停調書等にもとづいて、相手の財産(家財道具や不動産等)を差し押えこれを競売して取り立てたり、相手の給料を差し押えてその中から支払わせるのです。この手続は専門的ですので弁護士に相談して依頼することになります。しかし、これとても相手が行方不明であったり、負債をかかえこんでいたりすれば支払を受けることができないことはいたしかたのないところです。
ちなみに家庭裁判所に世話にならず当事者間が話し合って協議離婚する場合も少なくありませんが、養育料の支払について定めていなかったり、支払の口約束が守られなかったりしたときには、養育料支払請求の家事調停を家庭裁判所へ申立てて下さい。調停が成立すると上の手続をとることができますが、調停が成立しない場合でも審判によって養育料を決定してくれますので、とにかく家庭裁判所へ相談に出向いて下さい(民法766・879条、家事審判法9条1項乙類)。
ところで、過去に支払われるべきであった養育料についても支払請求が認められますので(昭和40年6月最高裁判例)、家庭裁判所に対して支払請求の家事調停を申立てることができます。

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