A、通常、人々が公開を欲しないような私生活に関する写真──個人の居室における姿態や衣服によって隠されている身体部分など──を撮影公開することは明らかにプライバシーの権利侵害となりますが、問題は、あなたのように何気ない日常生活の場面を写真撮影されて、無断で新聞雑誌などに公開された場合です。いくら報道の自由が保障さているとはいえ、その写真に正当性を理由づけるものがないかぎり、承諾なしに公開されたときはプライバシーの権利侵害になります。
ご質問では何か法的手段をとりたいということですが、考えられる手段として、まず差止め請求はすでに公表されてしまったわけですから、現段階では問題外です。また、謝罪(取消)広告などの名誉回復処分も考えられますが、これは名誉毀損についてだけ特別に認められた手段であってプライバシーの権利侵害には認められていません。そこで、損害賠償の請求ができるかどうかの問題にしぼられてくるわけですが、たとえプライバシーの権利侵害があっても、その行為に違法性がなければ不法行為は成立せず、請求は認められません。
あなたのケースをこれにあてはめて考えてみますと、2人に焦点があっているのがはっきりしているのであれば、当然、公開前にあなた方の承諾を得るべきであり、それを怠ったということはそこに違法性が存在します。よって、この写真が原因であなたのプライバシーが公開され、そのことであなたの経済的信用・社会的地位・人間的評価などが影響を受け名誉が毀損されるにされるに至った場合には、不法行為による賠償を求めることができます。この場合、プライバシーの権利侵害は主として精神的苦痛となり慰謝料が中心となります。ところが、どうみても単に町の風物詩の点景人物にすぎないとしか思えない場合は、承諾がなくても正当行為であるとして、不法行為は成立せず損害賠償は認められないでしょう。
ちなみに、本問では写真撮影による侵害をプライバシーの侵害として述べてきましたが、これを肖像権の侵害と考えることもできます。肖像権とは人格的利益をまもるために認められる権利で、わが国においては実定法上承認されていませんが、判例ではすでにその概念が承認されています(昭和44年最高裁判決等)。しかし、いずれにしたところで不法行為の成否に違いは生じません。
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