
法のくすり箱
Q、私には高齢の従兄がおり、彼には兄弟がおらず結婚もしていなかったので、今まで私が身の回りの世話をしてきました。その従兄が先日亡くなったのですが、勝手に財産に手を付けられないので、私が葬儀費用を負担しました。家等もこのまま放っておくわけにはいかず、困っています。また、私が負担した葬儀費用も戻ってくるのか気になります。私はどうすればよいのでしょうか?
A、あなたの従兄は兄弟もおらず、結婚もしていないとのことですが、従兄のご両親はもう亡くなっているのでしょうか。また、婚姻外の子どもを認知しているということや、どこかに異父兄弟や異母兄弟のいる可能性はないでしょうか。こうした人の存在が確認された場合は、彼らが相続人となります(法定相続人)。日本の法律では、配偶者(妻)・直系尊属(両親と祖父母)・直系卑属(子・孫…)・兄弟姉妹のみが相続人になることができ、残念ながら、いとこであるあなたは相続人にはなれません。
ところで遺言書などもなかったのでしょうか。もし遺言書があれば、遺産はその遺言書どおりに分配されます。
あなたの従兄の事例のように、相続人がいない、あるいは不明で、しかも遺言書があるかも不明といった場合、利害関係人もしくは検察官が家庭裁判所に申し出て、「相続財産管理人」を選任することになります(民法952条1項)。利害関係人には債権者も該当しますので、あなたは従兄の葬儀費用を負担しているということで利害関係人として家庭裁判所に申し出ることができます。
家庭裁判所は相続財産管理人を選任し、その旨を官報に公告します。この後2か月以内に相続人が明らかにならなかったときは、今度は相続財産管理人が、債権者・受遺者(遺言で指定された人)に対して2か月以上の期間を区切って名乗り出るようにという旨を公告します(957条1項)。あなたは、この期間中に、葬儀費用(その他立替えたり、貸していた金銭があればそれも)について申し出れば、その金額を受け取ることができます。
そして最後に、相続財産管理人・検察官の請求によって、再度、相続人は名乗り出るようにと6か月以上の期間を区切って公告がなされます(相続人捜索の公告)。その6か月が経過しても名乗り出る人がいなければ、そこでようやく相続人がいないことが確定します。これ以降、債権者や受遺者あるいは相続人がたとえ現れたとしても、もはやその権利を主張することはできなくなります。
ところで、あなたは従兄の世話をどの程度されてきたのでしょうか。従兄と生計を共にしてきたり、そうでなくてもその療養看護に努めてきた場合などには、あなたが「特別縁故者」として認められ、遺産の全部または一部を受け取ることができるかもしれません(958条の3。くわしくはそよ風38号参照)。前述の相続人捜索の公告期間が終わってから3か月以内にその旨を申し出れば、世話をした程度や状況に応じて遺産の全部または一部をもらえる可能性があります。
こうして最後に残った遺産は、すべて国庫に入れられることとなります。
あなたの場合、最低でも葬儀費用は返ってきますが、家庭裁判所への手続きをするとなると手間や時間がかかってしまいます。もし相続人がいない人の世話をすることになったら、遺言を残しておいてもらうことを強くお勧めします。

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