
法のくすり箱
Q、私はN画伯の絵が好きで12号の佳作を愛蔵していました。半年ほどまえ、その絵を催しに飾りたいとの友人の依頼があり、しばらくその友人に貸しましたが、催しが終わったので友人は返してくれたものと思っていましたところ、先日、偶然にもその絵が高級レストランに飾られているのを見かけたのです。友人に電話したところ,友人はその
絵は私からの他の預かり物と一緒に相違なく返品したといいます。面目ない次第ですが、友人と会った際に受け取ったかどうかはっきりしないのです。レストランの経営者に尋ねたところ、大阪梅田の画廊で買ったといいます。一体どうなっているのかとまどっています。今からでも取り戻せるものでしょうか?
A、あなたの友人は絵は返したと言います。絵の授受をもっと確実にしておくべきでしたね。友人が、はっきり、返したというのでは、通常、それ以上の追求は困難です。しかし、レストランにある12号の絵は、もともとあなたの所有であり、あなたからいえば盗品(盗まれたもの)か遺失物(落とし物)です。そして、レストランの絵が盗品または遺失物であるときは、あなたは、盗難または遺失のときより2年間は占有者(レストランの経営者)に対して、その絵の回復を請求することができます(民法193条)。
しかし、このレストランの経営者が、その絵を、競売で、もしくは公の市場で、またはその物と同種の物を販売する商人(画商)から善意で買い受けているときには、レストランの経営者が支払った代金を弁償しなければ回復することができない(代価の弁償)ことになっています(民法194条)。ここでいう競売とは、裁判所の行う競売手続きに限らず広く私的な競売も含まれると解されますし、公の市場は基本的には店舗販売を、同種の物を販売する商人とは店舗をもたない行商を指すと考えられており、結局、知人や行きずりの人から私的に買った場合をのぞく通常の売買は広く含まれることになります。
12号の佳作を取り戻すやむを得ない出費とお考えください。

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