法のくすり箱


Q、このたび、祖父が長年耕していた田舎の田んぼを相続することとなりました。今さら田舎に帰る気もありませんし、あの周辺も近年は開けてきたので、高額で売れないかと思っています。農地の売却は難しいとも聞きましたが、何か注意することはあるでしょうか?

<ことば欄>

☆農業委員会
 全国の市町村に設置される行政委員会のひとつ(農地がない、あるいは極端に少ない市町村では設置されない)。農業の発展と経営の合理化をはかるための農民の代表機関として、「農業委員会等に関する法律」により設置される。農地法等に基づき農地の権利移転の許可等の事務を行うほか、農地の利用関係の調整や担い手育成などの業務も行う。
 委員は、20歳以上の一定の耕作者らによる公選挙(市町村の選挙管理委員会が選挙人名簿を作製)で選出された委員と、農協等が推薦する委員と議会が推薦する学識経験者(どちらも市町村長が選任する)で構成される。委員は非常勤で、任期は3年。
 今回の法改正により、農業委員会の役割はきわめて重要なものとなった。

☆農業生産法人
 地域の農業者を中心として農業を主たる事業とする法人。農業収入(自己の農産物の加工・販売等も含む)が売上高の半分を超える必要がある。また形態は、株式会社(ただし公開会社でないもの)・農業組合法人・合名会社・合資会社・合同会社のいずれかに限る。構成員は、農業の常時従事者や農地所有者・農協など農業関係者が総議決権の4分の3以上を占める必要があり、農業関係者以外では農産物の供給を受ける者(スーパーや食品産業等)や当該事業の円滑化に寄与する者の参加しか認められない。また、役員の過半数が農業の常時従事者(原則年間150日以上)であり、さらにその過半数は農作業に原則年間60日以上従事している必要があるなど、きびしい規制がある(農地法2条)。
 ただ、今改正でその制限が若干緩和され、農業関係者以外の関連事業者への議決権制限=1関連事業者につき10分の1以下にとどめるとの規制は廃止されるなど、出資受入れの幅が広がった。


☆行政代執行
 行政上の強制執行の一種。行政上の義務が履行されないときに、本来義務者のなすべきことを、代わって行政庁自らが行い、あるいは第三者に行わせて、その費用を義務者から徴収するもの。
 代執行に関する一般法として「行政代執行法」という法律がある。代執行に関する一般的な原則・手続きはこの法律に定められている。代執行ができるのは、他の手段では履行確保が困難で、かつ、不履行を放置すると著しく公益に反する場合に限定される。
 手続きは、具体的には「戒告」「通知」「代執行」及び「徴収」の4つの段階がある。第1段階は、まず相当の履行期限を定め、その期限までに履行されないときは強制執行することをあらかじめ文書で連絡(戒告)する。第2段階は、この戒告を受けても指定の期限までに履行しないときは、強制執行をする時期・執行責任者の名前・執行に要する費用の見積額を文書で知らせる(通知)。第3段階は、指定の期限内に義務の履行がない場合に、いよいよ行政庁は事実行為としての強制執行(代執行)を実施する。そして、その執行に要した費用を義務者から回収する(徴収)のが第4段階で、義務者が任意に納付しないときには、国税徴収法の例によって、これを強制的に徴収することができるというもの。

ホームページへカエル
「法のくすり箱」目次にもどる
次のページ(法のくすり箱「仕事上のミス…賠償責任は?」)へ進む