
法のくすり箱
Q、私は、本の訪問販売をする主婦ですが、近所のA子さんに「盗みぐせがある」などとうわさされ、仕事が続けられなくなりました。その後も「泥棒」呼ばわりする電話がかかるなどしたため、住みづらくなり転居しました。A子さんに慰謝料を請求できるでしょうか?
A、ひとくちにうわさ話といっても千差万別です。公職の立候補者の選択にかかわるニュースのように、知る権利として法律上も保障され、公益上有用なものもあれば、町内の単なる茶のみ話程度のたあいのないうわさ話として法律問題になじまないものもあります。しかし、うわさ話や陰口といえども、私たちのプライバシーや名誉感情に深いかかわりをもつ場合、たとえば「見知らぬ人とラブホテルに入るのを見た」とか、「どこそこで万引きをした」などといったうわさ話ともなれば、当人にとってはまことに迷惑なことです。もし、無責任にPTAの会合や団地の集まりなどで不特定または多数の人に対してふれまわっている人物を突きとめることができれば、これに対して不法行為を理由に損害賠償を請求することができます。法律は、個人が安心して私生活を送ることができるようにプライバシーを保護し(たとえば民法235条・710条、軽犯罪法1条23号、刑法133条・134条)、またそれが真実であれ虚偽であれ、個人が社会生活上保っている名誉や信用を尊重しているのです(たとえば民法230条・231条・233条など)。
お尋ねのあなたの場合、A子さんに対し、抗議をして善処するよう要求し、場合によって慰謝料請求の調停申立てを簡易裁判所に申し立ててはいかがでしょうか。
もちろん、正式に訴訟で慰謝料を請求したり、相手を告訴することを警察や法律家に相談することもできます。その際には、あなたの主張を裏付けるしっかりした証拠を用意することに留意してください。
ちなみに、判例の中には、化粧品のセールスをする主婦に「盗みぐせがある」などの陰口を言って転居させた近所の主婦3人に対し、1人20万円、合計60万円の慰謝料の支払いを命じたものがあります(昭和59年7月仙台地裁)。

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