法のくすり箱
Q、先日、車で帰宅した際に、所要が重なり、車庫前の路上に止めたまま、つい車庫に入れるのを忘れてしまいました。翌朝、それを思い出し、家の外に出てみると、すでに警察にレッカー移動されていました。警察に行くと「夜間8時間以上、継続して路上に駐車していたから」と言われ、路上といっても駐車禁止の標識があるわけでもなく、自宅の車庫前である旨説明しましたが、警察はとりあってくれず、それどころか「これは青空駐車で車庫法違反だから、反則金ではすまない。いきなり4万円の罰金になるよ」と言われました。ついうっかり車庫前に止めていただけで、通常の駐車違反よりもきびしい措置に納得がいきません。そのまま受け入れるしかないのでしょうか?
A、駐車違反には、道路交通法が規定する違反行為のほかに、「自動車の保管場所の確保等に関する法律(車庫法)」が規定するものがあります。あなたが今回受けた取締りは、道路交通法の駐車違反ではなく、この車庫法による駐車違反です。
車庫法は、自動車の保有者等に、車の保管場所を確保して道路を車庫等として使用しないよう義務づけています。駐車規制を強化することで、道路使用の適正化、道路における危険の防止及び道路交通の円滑化を図るとしており、虚偽の保管場所申請や道路の車庫代わり使用など悪質な路上駐車をなくすために制定されたものです。
たとえば、一時的に駐車場契約をして車庫証明をとり、自動車を購入した後ですぐ契約を解除して、結局、路上を車庫代わりにする(青空駐車)とか、排ガス浄化対策のないトラックを多数所有する業者が、排ガス規制のない場所で車庫登録申請を行い、実際は規制のある地域で事業を行って、路上を車庫代わり使用する(車庫飛ばし)など、きわめて悪質なケースが少なくありません。そこで車庫法は、「何人も、道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならない」(11条1項)と規定し、こうした車庫飛ばしなど道路の車庫代わり使用をきびしく規制しています。違反した場合は3ヶ月以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられます(17条1項)。
さて、あなたのケースのように、車庫はあっても路上駐車した場合も青空駐車とされることがあります。車庫法の11条2項は、自動車が同一の場所に引き続き12時間以上(夜間においては8時間以上)駐車する行為を禁じているからです。駐車禁止の標識の有無にかかわらず、公道での長時間の駐車は、基本的に車庫法違反となります。たとえば、自宅に車庫はあるものの、仕事や旅行先等で、駐車場に入れず、路上に長時間放置したなども取締りの対象です。違反者は20万円以下の罰金(17条2項)で、道交法の反則金制度(行政罰)が適用されずに、刑事罰である罰金といった非常にきびしい措置がとられます。
駐車違反についての点数と反則金
交通違反の種類 | 点 数 | 反則金の額(千円) |
大型 | 普通 | 二輪 | 原付 |
車庫法違反 | 道路使用 | 3 | 罰則A | / | / |
長時間駐車 | 2 | 罰則B | / | / |
放置駐車違反 | 駐停車禁止場所 | 3 | 25 | 18 | 10 | 10 |
駐車禁止場所 | 2 | 21 | 15 | 9 | 9 |
駐停車違反 | 駐停車禁止場所 | 2 | 15 | 12 | 7 | 7 |
駐車禁止場所 | 1 | 12 | 10 | 6 | 6 |
罰則A:3ヶ月以下の懲役または20万円以下の罰金
罰則B:20万円以下の罰金(判例の相場は4〜5万円) |
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実際、ほとんどの人は諦めて、すぐに罰金に応じているようです。とはいえ、罰金は有罪と認められて初めて生ずるものです。もし、あなたが略式手続に応じず罰金を支払わないのであれば、検察官は改めて、公判請求か不起訴処分のどちらかを選択することになります。このときの重要なポイントは、故意であったかどうかです。判例では、車庫法の長時間駐車の規定は、故意犯を処罰する趣旨と解すべきであるとされているからです(最高裁平成15年11月21日判決)。あなたのように、ついうっかり入れ忘れたという過失は、故意が認められず無罪とされたのです。検察官があなたの故意を立証できないと判断すれば、不起訴処分となり、裁判も開かれることなく無罪放免となります。一方、正式裁判となった場合は、それなりに故意を立証できると検察官は判断したわけで、あなたとしてはこれを覆す主張をして本格的に争うこととなります。あっさり無罪が勝ち取れるわけではありませんので覚悟が必要です。

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