法のくすり箱
Q、ネットオークションでブランドの時計を購入したところ、後日、盗品であることが判明して、警察に証拠品として押収されてしまいました。きちんとお金を払って買ったのにと不安です。このあと、時計は返してもらえるのでしょうか?
A、盗品と知りながら売買等することは罪になります(刑法256条、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金)。しかし、盗品とは知らないで入手した場合は罪とはなりませんので、ひとまず安心です。 そして、たとえ盗品であっても、それを知らない(善意)で過失もなく入手したのなら、一応は、それを現に持っている人に権利が発生するのです(即時取得、民法192条)。
とはいえ、盗品であるとき(ネコババされた遺失物であるときも含む)は、特別に、盗難(または遺失)のときから2年間に限って、本来の所有者(=元の持ち主)は占有者(=現在持っている人)に対して、当該品物を返すように求めることができます(民法193条)。その際、占有者がその品を、競売・公の市場または同種の物を販売する商人から、盗品(遺失物)と知らないで買い受けたのなら、買ったときの代金を弁償しなければ、元の持ち主はその品物を返してもらうことはできません(民法194条)。
ここでいう競売とは、裁判所の行う競売手続に限らず広く私的な競売も含まれると解されますし、公の市場は基本的には店舗販売を、同種の物を販売する商人とは店舗をもたない行商を指すと考えられており、結局、知人や行きずりの人から私的に買った場合をのぞく通常の売買は広く含まれることになります。
あなたはネットオークションで買われたとのこと。民法193・194条が適用され、盗難から2年以内であれば、元の持ち主が返してくれと言ってくれば拒むことはできませんが、かわりに、あなたが支払った代金を受け取ることになります。もしその代金を払わなければ、あなたは返す必要はありません。また、盗難からすでに2年以上たっているなら、あなたには一切、返還する義務はありません。
ちなみに、インターネットを通じて盗品が出回るトラブルが多発したため、「古物営業法」は改正され、平成15年9月1日より、ネットオークションも古物競りあっせん業として新たに同法の対象とされました。古物営業法は、盗品等の売買を防止し、その発見を進めるための法律です。ネットオークションを開催する業者は、公安委員会へ届け出なければなりませんし、盗品の疑いのある出品物については警察に申告する義務があります。また、盗品と疑われる場合には警察も中止命令を出せることとなっています。とはいえ、現実には、膨大な出品に対して、十分に監視機能が働いていないのが実情のようです。

ホームページへカエル
「法のくすり箱」目次にもどる
次のページ(法のくすり箱「長時間の青空駐車…駐車違反より重い罰金?!」)へ進む