法のくすり箱
Q、私の住む分譲マンションは管理規約でペットの飼育を禁止していますが、それでも犬や猫を飼っている住人がいます。ペットはいずれも家族の一員として大切に飼われているようですが、その中には糞尿の処理や鳴き声による騒音が気になるペットもいます。どのように対処すべきなのか助言して下さい。
A、たて前からいえば、マンション住民は、いずれも、ペットの飼育を禁止する規約に拘束されます。この規約は、マンション住民(区分所有者や居住者)の共同の利益に反する行為を禁ずる建物の区分所有等に関する法律の定め(法6条1・3項)に由来するものと考えられます。
しかし、ペットを飼育するあらゆる場合が、規約違反であるとはいい切れないと考えます。小鳥や鑑賞魚など近隣に被害を与える可能性のないペットや、その種類、数量、飼育の仕方により他人に迷惑をかけるおそれなく飼われているペットの飼育まで、一律的、全面的に禁止する管理規約の定めは、個人の幸福追求論(憲法13条)を過度に制限するものとして無効ではないかと思われます。
しかし、これまでに飼育禁止の規約が裁判にまでなって争われた事例では、裁判所は「マンション内での飼育は一般に他の区分所有者に有形無形の影響を及ぼす」として管理規約の有効性を認めています(東京高裁平6・8・4判時1509−71)。
しかしながらいまや、ペットは、人びとをいやす「コンパニオンアニマル」と評価される時勢でもあります。このことを重視した東京都衛生局は、平成7年10月、「集合住宅における動物飼育モデル規程」なるものを作成して、集合住宅(マンション)においてペットを飼うにあたってのルール作りを先導しています。この規程は、「清潔」「疾病の予防」「しつけ」などの励行のもとで、マンションにおける適切な動物の飼育を進めようとするものです。
この問題は、「他の住民に不快感や迷惑をかけるおそれのない方法で飼育されているかどうか」がポイントであると考えます。周囲に迷惑が及んでいない場合にまで、常に、管理規約違反として飼育を差し止めるのは行きすぎ(権利濫用)です。周囲に不利益を与えないように、また与えさせないように声をかけ合うなど自他ともに留意することなどにより、ペットに適切な座席を与えるルール作りが期待されます。

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