法のくすり箱
Q、先日家事をしていて、ふと便利な台所用品を考えつきました。単純な組み合わせですがとても便利で、これなら売れるかもと思います。特許でも取ってみようかと夫に相談したところ、そんなもので特許なんて取れないよと笑われてしまいました。やはり無理なのでしょうか?
A、発明は、(1)産業上利用できるもので、(2)新規性(客観的な新しさ)があって、しかも、(3)進歩性(発明が困難)があり、(4)公序良俗に反していないなら、「特許法」「実用新案法」という法律で保護されています。
ただ、ご主人の言われるように特許を取るのはかなり難しいかもしれません。特許は、出願したあと、改めて内容について特許庁のくわしい審査を受けなければなりません。(3)の進歩性についての基準もきびしく、中・大発明が主な対象となっています。費用も高く(最低でも19万7000円)、通常、権利取得まで2年以上かかります。ただその分、特許は、20年もの間権利を独占できる強力なものです(特許法66・67条)。
私たちがよく知っている身近なものの中にも、ゴキブリホイホイや百円ライターなどの発明が特許登録されています。これは!と自信がおありなら特許権取得に挑戦してみてもよいかもしれません。
ただ、あなたの発明が、単純な組合せといった小発明なら、実用新案をとるのはいかがでしょうか。
特許と違って、実用新案は書類に不備がなければ、内容については審査を行わず、すぐに権利が登録されます。書類上問題がなければ、あなたは6ヶ月ほどで実用新案権を手にすることができるのです。費用は出願手数料1万4000円と第1〜3年分の登録料(6600円〜)で最低2万600円ですみます。ただしこの権利は特許権の半分、10年間のみ有効です(実用新案法14・15条)。

さて、特許や実用新案を取ればその発明品はあなたが独占することになり、当然他人がまねをしたり勝手に作って売ったりすることはできません。しかし、もし誰かがそんなことをしていたら、あなたはその第三者に警告したり、使用差止めや損害賠償の訴訟を起こすことになります。そのときには、実用新案の場合は、「技術評価書」という書類を特許庁からもらって相手側に示さなければなりません。実用新案権では、実は、このとき初めて、特許庁が内容について審査することになります(同法12・16条)。
このように、実用新案は案外簡単にとることができます。主婦の発明でも、大ヒットしたダイエットスリッパのように大きな利益を得た人もいます。あなたにもチャンスがあるかもしれません。
さて、出願の際は、類似したものが登録されていないか事前調査が必要です。特許や実用新案の内容については、特許庁ホームページにある特許電子図書館サービス(IPDL)で検索して、無料で調べることができます。また、(社)発明協会・日本弁理士会などにも、特許公報や実用新案公報といった資料がありますし、無料相談にも応じてくれます。
パソコンで出願されるなら、各地にある発明協会をご利用になるのが便利でしょう。また、郵送で出願する場合(別途電子化手数料が必要)には、権利をめぐって前後を争うときに出願日が重要になりますので、必ず書留で出しましょう。
ところで、特許も実用新案も3年分の登録料は最初にまとめて納めています。しかし、それ以降の登録料(段階的に上がる)を納め忘れると、もちろん権利は消滅してしまいますので十分ご注意ください。

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