法のくすり箱
Q、今まで自分の姓は「小西」という字だと思っていましたが、先日戸籍謄本を取り寄せたところ、「西」の字が下のような記載になっていました。驚いて両親に確かめたところ、両親も知らなかったとのことです。戸籍の記載を、普段使用している「小西」という字に変更することはできるでしょうか?
A、結論からいうと、本籍地の役場に申し出ることで訂正してもらうことが可能です。「改氏」や「改名」をする場合には、一定の要件を満たしていることが必要で、家庭裁判所に申し立てて許可を得るなど、複雑な手続きをとることとなります(そよ風42号参照)。
これに対して、あなたのお尋ねの事例は、氏の字体の訂正・更正にあたり、まったく異なる氏に変更する「改氏」ではありません。
戸籍業務を統括する法務省民事局では、通達により、「俗字」や「誤字」等から、「正字」への訂正・更正の申し出は、市区町村長限りで訂正して差し支えないとしています(平成2年法務省民2第5200号民事局通達)。そして、その字が、「正字」「俗字」「誤字」のいずれにあたるのかの判断についても、やはり法務省民事局の管轄するところとなっており、常用漢字表・漢和辞典の記載などをもとに、その判断の基準が一覧にして詳細に定められています。
正字と俗字の関係のほんの一例として、右のようなものがあります。そしてこれら俗字・誤字などから正字への訂正は、本籍のある市区町村へ申し出ることで記載の変更ができます。あなたの希望も、俗字から正字である「西」への訂正ですから、申し出により簡単に変更してもらえます。このほか、俗字・誤字ではないものの、「嶋」から「島」への訂正なども可能です。
ただ、訂正は戸籍単位で行いますから、あなたが結婚されていて独立の戸籍をもっているなら、戸籍の筆頭者(あなた?)とその配偶者の両名が共同で申し出ることとなり、どちらか一方だけの申し出ではできませんのでご注意ください。また、あなたが未婚で両親の戸籍に入っているなら、あなたの両親がそろって申請することになります。ただ、こうして訂正すると、先祖や親族の戸籍の字体と異なったものとなるわけで、ご両親は納得されないかもしれません。その場合には、「分籍」といって、成人した子は、親と独立した戸籍をつくることが可能ですので、あなただけの戸籍を分籍により新たにつくり、そこで字体の訂正を申し出ることとなります。
いずれにせよ、本人の意思で俗字等からから正字へ変更したものを、再びもとの俗字等へ戻すことはできませんのでよくお考えください。

ホームページへカエル
「法のくすり箱」目次にもどる
次のページ(法のくすり箱「借金まみれの相続…放棄するには」)へ進む