法のくすり箱
Q、私は夫と家庭裁判所の調停で離婚しましたが、そのときの条件に、私が3歳の子供Aの親権者となるかわりに、夫に2ヶ月に1度Aと会うこと(面接交渉)を認めました。しかしAは、私が夫に反発しているのを感じてか、一度面接させようとした機会にも、夫のそばに行こうとしません。私も、調停で一旦約束したものの、今ではAを夫と会わせたくありません。すると夫は、改めて家庭裁判所へ、Aとの面接交渉を認めるようにとの調停を申し立てました。私は絶対にAを夫(今では元の夫)に会わせたくないと主張しています。このままではどうなるのでしょうか?
A、親権を有しない親は、未成熟子と面接ないし交渉する権利があり、この権利は、面接交渉が子の福祉を害さない限り認められることになっています(東京家裁昭39・12・14審判)。あなたの元夫が、子の成長に悪影響を及ぼすような人物でない限り、原則としてあなたには子供Aを元の夫に会わせることが期待されます。それをあなたは承知のうえで拒んでいらっしゃるのですね。
ところで、元夫の方としては、あなたに対して、離婚調停のときの約束を盾に家庭裁判所へ履行勧告をしてもらうことができます。しかし、強制力をもって履行させるのは適当でないとされており、家庭裁判所も、あなたに履行命令を出すことはできません(家事審判法15条の6、25条の2)。
他方、現在、元の夫が家庭裁判所へ申し立てている調停も、あなたが応じないのでは不調になり、その場合、調停は自動的に審判に移行します(同26条)。この審判で、裁判所は改めてまた、面接交渉の要否を判断します。この判断が、元夫とAとの面接交渉を肯定するものであったとき、おそらく、その次には、元夫の申立てにより、その内容を履行するようにとの家庭裁判所の履行勧告がなされることが予想されます。ただし、履行の勧告はあくまで勧告であり、履行の命令としての強制力はないことは前述のとおりです。
このほか、元夫が間接強制(民事執行法172条I・IV、家事審判法15条)を申し立て、裁判所が決定で相当期間を定め、その期間内に履行しない場合、その遅延期間に応じてあなたに賠償金の支払いを命ずることも予想されます(ただし、間接強制は不可とする見解もある。昭56・7・17大阪高裁管内家事審判官有志協議会協議結果、家裁月報34−9−213)。
あなたの意思をどの程度貫くのか、よく考えてください。今の家庭裁判所での調停を善用し、納得のいく選択がされるように祈ります。

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