法のくすり箱
Q、私は、2年前、妻Aと別れる際に、当時小学校5年生だった娘Bの親権者を母と決めて離婚しました。以来、毎月養育料を支払っています。ところが先日、娘Bが家を出て私のところへ来てしまい、母のもとへ帰らないと言います。別れた妻Aから強い抗議があり、裁判をしてでも娘Bを取り戻すというのですが、どうしたものでしょうか?
A、親権者には、未成年の子を監護し教育する権利・義務があり、その子が手元を離れている場合には、連れ戻す権利があります。娘Bがあなたのところにいるのなら、元妻Aは、あなたがAの親権の行使を妨害しているとみて、妨害排除請求訴訟をすることが認められています(最高裁昭35.3.15判決)。
しかし、このような裁判では、子どもの幸福・利益の観点とともに、子どもの意思が尊重されます。あなたの娘さんBのように、もう10歳を超えた少女の場合には、その自発的意思によって母のもとを離れて父であるあなたのところで生活しているのであれば、それでも、あなたがAの親権・監護権の行使を妨害していると、一概にいうことはできかねます。
あなたが強制力をもって娘さんを拘束しているということではないと認められれば、Bが裁判で連れ戻されることはありません(最高裁昭46.11.30判決)。むしろあなたは、Bの親権を、Aからあなたに変更する手続きを検討すべきかと思われます(親権者の変更、民法819条6項)。
そこで、親権者の変更手続きですが、まず、別れた妻Aの所在地を管轄する家庭裁判所に調停を申し立てなければならず(調停前置主義)、調停が不成立のときは自動的に審判に移行します。この審判により、親権者の変更の可否が決められます(家事審判法9条1項乙類7号、17・18・26条)。

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