法のくすり箱
Q、私は、10年ほど前にサラ金から年利40%で50万円を借り入れました。それから少しずつ返済してきましたが、まだ完全には返済できていません。聞くところによると、法律があって、18%以上の利息の定めは無効だそうです。それなら、私の場合も、もう借金はなくなっているということではないのでしょうか?また、借金がなくなってから支払った分については、返してもらえないのでしょうか?
A、おっしゃるとおり、「利息制限法」という法律があり、元本が10万円以上100万円未満の貸金契約の場合、年利18%以上の利息の定めは、18%を超える部分について無効となります(1条1項)。同様に、元本が10万円未満の場合には年利20%以上、元本が100万円以上の場合は年利15%以上の利息の定めは、それぞれの制限金利を超える部分について無効となります。
そして、この利息制限法の制限金利を超える金額を支払った場合、その分は金利を支払ったのではなく、元本を支払ったものとされます(最高裁昭和39年11月18日大法廷判決)。したがって、あなたのように、50万円を借り入れて年18%以上の貸金契約にしたがって返済をしていた場合、その返済期間が長ければ、契約上はまだ借金が残っている状態でも、実際にはすでに借金はなくなっているというケースが存在するのです。
一方、貸主が「貸金業の規制等に関する法律(貸金業法)」で登録を受けた貸金業者であるときには(サラ金はこれに該当する)、借主に対して貸金契約時及び返済時にそれぞれ同法で定められた事項を記載した書面を交付していて、しかも借主が利息制限法の定めを超える金利を自らすすんで任意に支払ったといえるときには、この利息制限法を超える金利の支払も有効であるという規定があることはあります(みなし弁済、貸金業法43条1項)。しかし、実際の裁判では、このみなし弁済の主張が認められることはほとんどありません。
そして、利息制限法に照らして借金がなくなってしまっているのに、その後も契約にしたがって返済を続けていたなら、貸主は返済を受ける理由がないのに返済を受け続けたということになり、そのお金は、理由なしに受けた利益、つまり「不当利得」であるとして、貸主が借主に返還しなければならないとされています(最高裁昭和42年11月18日大法廷判決)。
とはいえ、最初に一度お金を借りて、その後ずっと返済のみを続けていた人は少なく、借りては返すの繰り返しの人が多いと思います。このようなケースでは、いついくら借りて、いついくら返したかを、借主がきちんと記録している人はほとんどいません。そこで、まずは、貸金業者に対して、これまでの取引履歴をすべて開示するように求めることとなります。従来は、この取引履歴を開示しない貸金業者もいましたが、平成17年7月19日に最高裁の判決が出て、取引履歴を開示しないために債務の整理が遅れた場合、貸金業者が損害賠償の責任を負うということが明確化されました。このため、今後は、開示に協力する業者が増えると期待されます。
実際の取引履歴の開示やその後の過払い金の返還交渉あるいは返還訴訟となると、素人ではなかなか難しいと思います。お近くの法律事務所に出向いて手続きを依頼されることをお勧めします。
ちなみに、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」では、平成12年6月1日の改正で、年利29.2%(それ以前は40.2%)を超える金利で業者がお金を貸すこと自体が犯罪とされています(5条2項。違反すれば、5年以下の懲役・1000万円以下の罰金・併科あり)。そのため、サラ金業者はこの上限近くの金利での貸付を行っています。利息制限法で定める15〜20%の金利と、この刑事罰を伴う29.2%との間が、いわゆる「グレーゾーン金利」と呼ばれるものです。
近年、多重債務者の増加が社会問題となっており、こうしたサラ金業者の貸付に対しても、最高裁判所できびしい判断が相次いで出されています(平成17年12月15日1小判決、平成18年1月13日2小判決)。これを受けて、このグレーゾーンの廃止も現在検討されているようです。

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