法のくすり箱
Q、私は、父の土地・建物を相続しましたが、生前父と関係のあった会社の借金の抵当にはいっていました。私としては、今後会社の借金にはかかわりたくなく抵当権を消してしまいたいのですが、できるでしょうか?
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- A、まず不動産などの財産を相続すると、その不動産に付随した権利や義務をも承継することになります。ですから被相続人が死んでも抵当権は消滅せず、また会社とあなたが何も関係がないからといって義務を免れるものではありません。つまりあなたは会社の借金の担保に入った状態のままで、不動産を引き継ぐことになります。
ところで担保の性質ですが、被相続人が生前単に会社の借金のために土地・建物を担保に貸していただけだったのでしょうか。それとも借金の連帯保証もしていたのでしょうか。
前者を物上保証といい、万一会社が借金を返せなかった場合にそなえて土地・建物が担保になっているにすぎませんから、物上保証人には、借金を支払う義務はなく、債権者の支払いに応じる必要はありません。ただ、会社が借金を返せない場合は抵当権が実行され、土地・建物が競売にかけられることになりますが、仮に、その不動産だけで借金が支払えなくてもそれ以上の責任は問われません。
これに対して、被相続人が連帯保証もしていた場合、相続人は、連帯保証人の地位も承継するのがふつうですから、支払いの請求に応じなければなりません。そして、借金の支払いが抵当に入った不動産だけで足りないときには、支払いの請求が連帯保証人の一般財産にもおよび、最悪の場合には、全借金を支払うことにもなりかねません。
あなたの場合は、物上保証人のようであり、抵当権をどうしても消滅させたいと望むのであれば、会社に別の担保と差し替えるように交渉し、債権者の承諾を得るか、債権者に事情を話し、担保をはずしてもらうしか方法がありません。しかし債権者にとっては不利な相談ですから、はたして債権者が応じてくれるかどうか…。
もっとも、借金の方が土地・建物の価格よりも低いのであれば、とりあえず、まずあなたが債権者に対して会社の借金を支払ってしまって、次にあなたが会社に求償する方法もあります。
いずれにしても、相続の際には登記簿謄本によって当該不動産の権利や義務について確かめ、最も良い相続のしかた(たとえば限定承認といってプラスの財産の範囲でマイナスの財産を支払うというかたちの相続もあります)を選ぶことが大切ではなかったでしょうか?そうすれば、よけいな借金を背負い込まずにすむからです。
<連帯保証>
保証人には、連帯保証人と「連帯」の2文字のつかない普通の保証人とがある。たとえば、金の貸し借りで、貸主に対して保証人になったとする。普通の保証では、保証債務は主債務(借主の債務)を補充するものであり、貸主がいきなり保証人のところへ請求してきたときには、まず借り主に請求するようにと抗弁できる。しかし連帯保証人はそれができない。また普通の保証人が数人いるようなとき(共同保証)、各保証人は貸主に対して保証人の頭数で債権金額を割った額だけ払えばよい(分別の利益)。しかし連帯保証人は数人いても、各自が全額を貸主に支払う責任がある。この場合、弁済をした連帯保証人Aは、貸主に代わって借主に対して支払請求権を行使できるが(民法500条)、さらにAは、他の連帯保証人に対しても求償(他に2人連帯保証人がいたなら、そのB・Cに対して各3分の1ずつ求償)できる。
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