法のくすり箱
Q、インターネットのホームページで商品を購入するにあたって、私はうっかり操作ミスをしました。10番の商品を3個注文するつもりが、3番の商品を10個と入力してしまいました。その間違いは、誤った商品が送られてきてはじめて気がついたのです。この売買契約をなかったこと(無効)にはできないものでしょうか?
A、あなたの希望が通るかどうか、以下の説明からご判断下さい。
注文されるにあたって、あなたには、客観的な表示(3番の商品を10個注文する)とあなたの真意(10番の商品を3個注文する)との間に、大きな食い違い(錯誤=さくご)を生じています。このような、意思表示の重要な部分に錯誤があった場合に、法律(民法95条)は、原則として契約を「無効」としていますが、ただし、表意者(あなた)に重大な過失があったときには、無効を主張できないものとされています(同条ただし書)。そして、このような単純な操作ミスによる誤った入力が重大な過失にあたるかどうか。消費者の側では、もちろん、操作ミスによる誤入力は重過失ではないことを望み、事業者の側では、もしこれが重過失ではないとすると電子商取引が根本的に阻害されると主張して、大きな問題となってきました。
そして、この問題の解決に資するために、平成13年12月25日に「電子消費者契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)」が施行されています(そよ風118号参照)。この法律によれば、事業者がホームページの映像面を通じて消費者の意思を確認できる措置を講じていない場合には、消費者は、たとえ重過失があっても、錯誤を理由とする無効を主張できるものとしました(同法3条)。
あなたの入力したデータ内容(3番の商品を10個注文する)を、契約の相手方である事業者が、再度確認する画面を送信し、注文を入力した消費者(あなた)に自分が表示した意思表示の内容を確認させる措置を講じていたときには、消費者は錯誤による無効を主張することは困難です。しかし、事業者がそのような措置を講じていなかったときは、消費者は、たとえ重過失があっても錯誤を理由とする契約の無効を主張できるというわけです。その場合であれば、あなたは、入力した商品を買う必要はありません。一方、業者の確認メッセージがあっても、あなたがその間違いに気がつかず、そこで訂正することを怠ったということになれば(それにもかかわらずあなたに重過失がないと判断されない限り)、あなたは3番の商品を10個買うことになり、あとは返品・返金等の業者が有するシステムを利用するほかありません。

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