法のくすり箱
Q、取引先に20万円分の商品を納めましたが、言い訳ばかりしてなかなか代金を支払ってくれません。取引先は、私がちゃんとした商品を納めたことは認めていますし、私もいちいち訴訟をしてまで取り返すのもどうかと思うのですが、かといってこのままでは商品代金を回収できそうにありません。どのようにしたらよいでしょうか?
A、あなたの場合のように、相手方がお金を支払わなければならないことは認めているけれども、現実に支払ってくれないような場合に、簡単に裁判所の手続きを利用して権利を実現する方法があります。「支払督促(しはらいとくそく)」とよばれ、相手方(債務者)の住所地の簡易裁判所に支払いを促してもらう手続きです(民事訴訟法382〜396条)。

当該裁判所に支払督促申立書を提出することで手続きが開始されます。この申立書については、裁判所に典型的な紛争事例ごとに申立書式が用意されていますので、これを利用されると便利です(右図参照)。なお、申立手数料は訴訟をする場合の半額となっています。
裁判所は申立書を審査し、債務者に対して「支払督促」を送ります。これを債務者が受け取って2週間が経過すると、債権者は「仮執行宣言」の申立をすることができます。これは、対象となっている金銭債権を強制執行できるように裁判所が宣言するよう求めることです。この仮執行宣言の申立は、それができるようになったとき(支払督促送達の2週間後)から、さらに30日以内に、必ずしなければなりません。もし期間を過ぎれば、支払督促の手続きそのものが失効してしまいますのでご注意ください。
こうして、仮執行宣言が付された支払督促が債務者に到着した後、さらに2週間が経過すれば、その支払督促に記載された権利内容は、確定した判決と同じ効力を生じ、もはや争うことができなくなります。あなたは、これをもって債務者の財産を差し押さえることにより代金を回収することができます。また、こうした法的手続きをとれば、債務者もあきらめて任意にお金を支払ってくれるかもしれません。

しかし一方、債務者は、支払督促を受け取って2週間以内に、その記載された権利内容に異議を申し立てることができ(裁判所から送られる支払督促にその旨が記載されている)、その場合には、仮執行宣言が付されないまま、訴訟手続きへと移行することとなります。そうすると、あなたは訴訟の手数料として残りの半額を納めて、訴訟のために証拠等を準備しなければならなくなります。
このように、支払督促には、 (1)裁判所に出頭する必要がなく、証拠調べも必要ないなど、手続きが簡単であること、(2)申立費用が訴訟の半額と安いこと、(3)最終的には確定判決と同じ効果が得られること等のメリットがあります。
しかし逆に、(1)対象となるのが金銭債権に限られること、(2)異議を申し立てられると通常の訴訟に移行するので、かえって時間がかかることになる等のデメリットもあります。
つまり、あなたのケースのように、債権者と債務者の間で、金銭債権が生じていること自体は明らかであるような場合には、簡単かつ有効な手続きといえましょう。

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