法のくすり箱
Q、私はA社から買う機械の前渡し金として300万円の約束手形を切りました。しかし、納期になってもA社は機械を引き渡しません。この手形を期日に支払わないですます方法はないでしょうか?
A、手形の金額と同額の現金を取引銀行(支払銀行)に積むことです。契約不履行を理由に現金(異議申立金)を積んで支払いを拒絶できます。一旦振り出した約束手形の支払いを拒絶すると、不渡処分を受け、不渡報告に乗せられたり(1回目の不渡りのとき)、銀行取引停止処分を受けたりします(1回目から6ヶ月以内に2回目の不渡りのとき)。そこで、不渡処分を受けることを防いでおいてから、支払いを拒絶しなければなりません。そのためには、次の手続きをふみます。
- (1) まずあなたは、約束手形の支払場所に書いた支払銀行(甲銀行α支店)に事情を説明して、「契約不履行」を理由に支払いを拒絶することを告げ、手形金額と同額の現金(異議申立預託金)を銀行に預けます。
- (2) 支払銀行は、手形交換所に、あらかじめ異議の申立をする旨を予告し、約束手形の満期(交換日)から起算して3日目の営業時限までに、手形金額と同額の異議申立提供金をそえて異議申立書を交換所に提出します。
このような手続きをふんでおけば、たとえ、期日に手形の支払いを拒んでも、不渡処分を受けません。


しかし、あなたが、手形金の取立ての裁判を打たれても手形を支払わないですむのかどうかは別の問題です。約束手形がA社のもとにあって、A社が取立てにまわした場合には、あなたは契約不履行を理由に支払いを拒めます(人的抗弁、原因関係上の抗弁)。ところが、A社がB社に裏書き譲渡している場合は、B社がその手形をもらったとき、A社とあなたの間にトラブルが起こっていることを知っていた(悪意)ことをあなたが立証しない限り、あなたは手形金をB社に支払わなければなりません。この立証は実際には困難なことが多く、あなたとしては、時間をかけてB社と交渉し適当な線で和解をめざすのも心得ごとです。

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