法のくすり箱
Q、私の住まいは借地上にあり、長年、地主に地代を払っています。現在の地代は、バブル経済の影響で周辺の地価が高騰していた平成3年頃に定められたものです。ところがその後、周辺の地価は下がり続けています。そして地代の相場も大幅に下がっていると聞きます。そこで私は先日、地主を訪ね、地代の減額を申し出たのですが、それはできないの一点張りで、まったく聞き入れてはもらえませんでした。どうすればよいのでしょうか?
A、地代の変更は、まず当事者間での話合いです。それができないときには、調停や裁判ですが、法律は、まず必ず、簡易裁判所へ調停を申し立ててそこで話し合うことを求め、それが不調に終わったときは、地方裁判所に訴えて適正地代を決める、という順序になっています(調停前置主義、民事調停法24条の2)。
あなたの借地の地代が、地価の変動や公租公課の増減等によって、近傍の類似の土地の地代に比べて不相当・不釣合いになった場合には、あなたは、地主に対して地代を減額するように請求することができます(地代が高すぎるとき)。また地主の方も、あなたに地代の増額を請求することができます(地代が安すぎるとき)。このように、地代が不相当な場合には、土地の貸主・借主双方に、地代の増減額請求権が認められます(借地借家法11条1項)。
この地代増減請求にもかかわらず、相手がそれに応じてくれない場合には、前述のとおり、その土地を管轄する簡易裁判所に調停を申し立てて話し合うことが必要となります。調停では、不動産鑑定士や土地家屋調査士、あるいは弁護士といった専門家が調停委員となり、双方の主張を聞いたうえで、公租公課や地価の変動、さらに近傍の地代等の実情を考慮して、調整がはかられることになります。
そしてそれでも話がまとまらなければ、地方裁判所に地代増減請求の訴えを起こすことになり、裁判で適正な賃料を決めることになります(民事調停法24条・24条の2)。
ところで、あなたのケースのように、借主側が地代減額を請求する場合には、最終的に地代が決まるまでは、借主側は、従前の地代相当額を引き続き支払われることをお勧めします。借地借家法では、地代等の減額請求の場合、両者で協議が調わない間は、貸主(地主・家主)が「相当と認める額」の地代等を請求することができるとされているからです(11条3項)。
もしあなた(借主)が、一方的に減額した地代を地主に振り込んだりすると、これを地主は地代の不払いとして、契約の解除事由とすることがありますのでご注意下さい(解除を認めた例:東京地裁H6・10・20判決など)。なお、調停や裁判所で新しい適正な地代が決まったときには、その額が支払ってきた額より安ければ、その差額に1割の利息を付けた額が返還されることになりますのでご安心下さい(同項但書)。
ちなみに、地代等の増額請求の場合には、逆に、協議が調わない間は、借主が「相当と認める額」の地代等を支払えばよいとされ、調停・裁判で適正な地代等が決まったあと、同様の調整が行われることになります(11条2項)。

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