法のくすり箱
Q、私の友人は長年にわたり借家住まいを続けていますが、私は、その友人が家を借りるとき頼まれて保証人になっています。幸い、保証義務による支払を言ってこられることもなく現在に至っていますが、私も友人もすでに高齢であり、保証人になって10年以上にもなることから、そろそろ、この家賃の保証人を抜けたく思います。どうすればよいのでしょうか?
A、いったん引き受けた保証人を抜けることはきわめて困難です。
あなたは、友人に頼まれて保証人になったといいますが、法律的にいえば、保証人になる契約(保証契約)は、借家の家主と保証人になるあなたとの間の契約なのです。したがって、保証人をやめるには、家主の同意が必要です。この同意が得られれば、もちろん保証契約は合意解除され、あなたは保証人を抜けることができます。しかし、家主にとっては保証人はあった方がよいに決まっており、簡単には保証人をやめさせてくれないのが普通です。
また、現在の借家制度が借主の権利を重視していることも、保証人をなかなかやめにくいものとしています。友人の借家契約期間(一般的な慣行からして、おそらく2年程度)が終了しても、現在の制度によれば、原則として従来どおりの条件で借家契約は更新されます。そして、そのときには、保証人の保証義務も引き続き継続するとされています(平成9年11月13日最高裁判決)。
しかし他方、保証契約が締結された後、相当の期間が経過して、借主がしばしば家賃の支払いを怠っているなど不誠実であるにもかかわらず、家主が借家契約を解除せずに放置しているような場合には、例外的に、保証人は家賃の保証契約を解除することができます(昭和8年4月6日大審院判決)。
あなたのように、契約から10年も経過しているときには相当の期間と考えられ、もしも家賃が滞りがちなどの事情があれば、家主に対し一方的に解除を申し出ることができます。
ところでこのケースでは、ご高齢の友人が死去されるという事態も起こりうることです。その場合、友人に相続人があれば、その相続人が友人の借家権の地位を引き継ぎます。しかし相続人が、あえてその借家に住まないなら、そのときには、そこで借家契約が終了し、あなたの保証契約も解消することとなります。一方、相続人が新たな借家人となって住みつづけるときには、あなたは、なお保証人の立場を離れることはできません。しかしこのときでも、あなたは、相続人や家主にわけを話して新しい保証人と代わってもらうチャンスといえましょう。
また、友人に相続人がいなければ、借家契約も、保証契約も、友人の死亡により、その時点で終了するのはもちろんです。
なお、相続人がいなくても、事実上同居している女性などがいる場合、事情によってはその女性に借家権の引継ぎが認められる場合があります(借地借家法36条1項)。この場合には、その女性は借主の地位を相続するわけではありませんから、あなたの保証債務は、借主である友人が死亡した時点で解消されるものと考えられます。
いずれにせよ、あなたが、もう相当期間経過している保証債務を免れたいのであれば、その旨をねばり強く家主や借主に話して、誰か他の人を保証人に立てるように交渉するのが一番です。

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