法のくすり箱
Q、私はこの秋から神戸市内の会社で働きはじめました。今は郊外の両親の住む実家から電車通勤していますが、そろそろ便利な市街地で暮らそうと思い賃貸の部屋を探しています。賃貸物件の広告を見比べていると、家賃・共益費のほかに、敷金や敷引き、権利金、礼金、保証金といった項目がありますが、これらはいったいどのような性質のものでしょうか?
A、神戸など関西地方で賃貸の物件を借りる場合、不動産業者への仲介手数料のほか、家主さんへまず「敷金」を支払うのが普通です。この敷金は、家屋の賃貸中に、借主が、建物を壊したり、賃料の滞納を生じたりして、家主に損害を及ぼした場合における、家主への支払を担保するものです。家賃の10倍位が敷金の目安です。

そして「敷引き」とは、賃貸借契約が終了して貸主が借主に敷金を返すとき、敷金の2〜3割程度が敷金から天引きされる契約慣行をいいます。この敷引きの後の残りの敷金から、前記の賃貸中の建物損壊などによる損害金が支払われ、その残りが借主に返金されるのです。
次に、賃貸物件が営業上とくに価値があるものだったりした場合には、借主は貸主に対し、敷金とは別に「権利金」というものを支払うことがあります(下記ことば欄参照)。しかし、通常のケースでは権利金は考えなくてよいでしょう。
ところが、東京など関東地方では、仲介手数料のほか、家主に対して「礼金」と「保証金」を支払うのが一般的です。この礼金・保証金は、どちらも賃料月額の2ヶ月分程度が目安です。そして礼金は、家主に渡されるとそのままになり、賃貸借終了時にも借主に返ってきません。家主のとりきりになる点で敷引きに相当し、または権利金に通ずるものがあります。そして保証金ですが、この場合、敷金と同様、賃貸中に生じた損害の担保となるものです(保証金はこれ以外の意味で使われることもある。下記ことば欄参照)。
契約終了時の原状回復に際し、賃貸中のどのような費用負担が敷金や保証金からの精算の対象となるのかはトラブルが生じやすいところです。また、敷金のうち敷引きに相当する部分は精算の対象とならないで家主の取り分となることは、関東の人からはわかりづらい制度との批判があります。そして近時、関西でも、敷金の用語を使わず保証金といい、敷引きを解約引き・礼金などと表示する例がみられます。慣習に任せられてきた敷金や保証金についても、これから全国的に統一化への取扱いが進むものと思われます。
ことば欄
- ☆ 権利金
- 一般的に、貸してくれたことへの対価として賃貸借契約の際に渡すお金。借地借家法によって借主の立場が強く守られているため、建物を貸すと家主に大きな負担があるということで、こうしたお金を渡す習慣ができた。敷金と異なり、契約終了後も一般的に返金されない。
- ☆ 保証金
- さまざまな異なった意味で使用されるが、主なものは次のとおり。
- (1) 敷金と同じ性質
- 主として建物・土地を事業用に使用する場合で比較的高額となるときは、敷金ではなく保証金と呼ぶ場合が多い。
(2) 権利金と同じ性質
- (3) 建物建設協力金として
- 賃貸目的の建物を建築するに際し、借主となる予定者がその建設資金の一部を家主に貸す場合があり、それを保証金と呼ぶことがある。このお金は、賃貸借契約の終了とは無関係に、一定期間据え置いた後、家主から借主に分割返還される。

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