
法のくすり箱
Q、2年前に家賃月7万円のマンションを借り、来月がその更新時にあたりますが、先日、家主から「家賃を月8万5000円にする」と通告されました。あまりに大幅な値上げであり応じられません。どうすればよいでしょうか?
A、家主にとっても借家人にとっても、家賃の増額は重大な関心事であり、話し合いがなかなかまとまらないのが現状です。
借地借家法では、こうしたトラブルにそなえ、家賃についての規定を設けています。
すなわち、著しい経済事情の変動により家賃の額が不相応となれば、家主から借家人に一方的に家賃の増額を請求することができます(借地借家法32条1項)。前回の増額から相当の期間(事例によって異なるが、一応、2〜3年)が経過していることのほか、その間に土地・建物に対する税金が上がったり、土地・建物自体の価格が高くなったり、従来の家賃が、付近の同一仕様の土地・建物の家賃に比べて安すぎるようになったなどの条件がととのえば、家主からの一方的な増額請求でも、それがあなたに通知されたときから、たとえあなたの承諾がなくても増額が認められることになります。
ただし、家主が請求した額であればどんな増額でも認められるわけではなく、増額はあくまで客観的に「適正な額」で決められなければなりません。
そこで、適正であるかどうかに争いがあり話し合いがつかないときには、裁判所に「適正な額」を決めてもらうことができます(同32条2項)。この際、まずは簡易裁判所に調停を申し立てます(調停前置主義)。この調停の中で合意できず、あるいは「調停委員会が定める調停条項に服する」ことにも合意できないならば、裁判を行うことになります。
借家人は、調停や裁判で「適正な額」が決まるまで、「相当と思われる額」を法務局の供託所に供託しておきます。こうしておけば、家賃滞納を理由に契約を解除される心配もありません。しかし、後日、裁判が確定して、適正な額が供託していた額より高ければ、不足分について年1割の利息をつけて支払わねばなりません。
さて、あなたの場合、今回がはじめての更新であり、当初、家主が敷金・礼金なども含めてそれなりに家賃を算出したと考えられるところから、2年で実質2割の値上げは少し高すぎるようです。あなたが相当と思う額をまず家主に支払い、受領拒否をされた場合には供託すればよいでしょう。
いずれにしても、家主と借家人は、これからも長く付き合ってゆかねばならない間柄です。家賃はお互いに真っ正面から対立する問題ではありますが、冷静に客観的に解決をはかる方向で努力するべきでしょう。

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