法のくすり箱
Q、高校生の娘が、親には黙って、勝手に携帯電話を購入しました。未成年者のした契約は親が取り消すことができると聞いていたので、販売店に契約の取消しを求めたのですが、販売店側は親の同意確認のための電話もしたと言います。娘はどうやら友人のところにかかるようにしていたようで、販売店は取消しに応じてくれません。あきらめるしかないのでしょうか?
A、本来ならば、未成年者(満20歳未満の者)が親などの同意を得ずにした契約は取り消すことができます(民法4条)。そして契約を取り消すと、使用済みであってもその状態のまま商品を返却すればお金を返してもらえます(同121条)。
しかし、このケースでは販売店側の言うように契約を取り消すことができません。携帯電話の普及に伴って、今ではお小遣いで十分買えるような安価な、あるいはゼロ円の携帯電話も出まわっています。しかし、通信契約については今後も継続的に料金が発生することから、携帯電話の販売店では、親の同意の有無を電話で確認しています。この点、販売店側に落ち度はなく、逆にお子さんのほうが意図的に販売店側を誤解させるような行動をとったのです。民法では、このように未成年者自らが成年であると嘘をついたり、親の同意がないのにあると偽った場合には、契約を取り消すことはできないとしています(20条)。
どうしても解約したい場合には、成人が契約した場合と同様の扱いになり、通信契約は解約できますが、電話機の代金は返ってきません。なお、販売店によっては解約金を請求される場合があるようですが、不当に高額な解約金を設定した約款については、消費者契約法9条に基づいてその無効を訴えることができます。
今回のようなケースのほかにも、日常の商取引が円滑に行えるよう、民法では、未成年者の契約の取消しについて、次のような例外を定めています。
- 未成年者がお小遣いや自らの収入で支払える程度の金額の場合(5条)、
- 就職した未成年者がその営業活動において契約した場合(6条)、
- 未成年者が結婚している場合(753条)、
- 未成年者本人が成年に達した後に追認した場合(19条)
には、契約は取り消すことができないので注意が必要です。
あなたもこれを機会に消費者問題についてお子さんとよく話し合われてはいかがでしょう。

最近、中高生を中心に未成年者が消費者トラブルに巻き込まれる件数が急増しています。兵庫県下では、中高生の消費者トラブル相談件数が前年比の3倍に達し、なんとその9割が携帯電話やインターネットに関連する相談だとの調査もあります。インターネットを利用中、自覚のないまま有料サイトにつながっていたり、アクセスポイントを海外に書き換えられてしまい、高額の請求がきて慌てるなど、ネットや通信に関わるトラブルが目立っています。また、大人でも騙されるような悪質商法が蔓延しており、家庭や学校での消費者教育をとおしてこれらのトラブルを未然に防ぐよう注意を促すことが大切です。そして、万一当事者となった場合には、できるだけ早くお近くの消費生活センターや法律事務所に相談しましょう。
民 法
第4条〔未成年者の行為能力〕
(1) 未成年者カ法律行為ヲ為スニハ其法定代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但単ニ権利ヲ得又ハ義務ヲ免ルヘキ行為ハ此限ニ在ラス
(2) 前項ノ規定ニ反スル行為ハ之ヲ取消スコトヲ得
第20条〔制限能力者の詐術〕
制限能力者カ能力者タルコトヲ信セシムル為メ詐術ヲ用ヒタルトキハ其行為ヲ取消スコトヲ得ス
消費者契約法
第9条〔消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効〕
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
1 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの───当該超える部分
2 (省略)

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