法のくすり箱
Q、ある旅行代理店で海外旅行ツアーを申し込み、代金も支払ったのですが、その旅行代理店が倒産してしまいました。どうすればいいのでしょうか?
A、あなたは、そのパック旅行を主催する旅行業者に、ツアーへの参加を要求することができます。旅行代理店と契約した時点で、旅行会社と直接契約が成立したことになり、あなたが旅行代理店に支払った代金は、直接その旅行業者に支払ったものとみなされるからです。
そもそも旅行代理店とは、主催旅行を実施する旅行会社を代理して、旅行者と契約等を行う事業者をいいます(旅行業法2条2項)。この代理行為には、民法99条の「代理人の権限内の行為は直接本人にその効果が及ぶ」とする規定が適用されるのです。
したがって、旅行会社があなたの要求を拒否した場合には、あなたは契約を解除して代金を取り戻したり(民法541条)、債務不履行に基づく損害賠償を請求することもできます(民法415条)。
それでは、万が一、その旅行業者も同時に倒産してしまった場合はどうなるのでしょう。
このような場合に備えて、旅行業者には、その規模や取扱業務に応じた額の営業保証金の積み立てが義務づけられています。旅行業者がもし倒産したときには、この営業保証金が返済の原資にあてられることになります(旅行業法7〜10条、そよ風81号参照)。さらに、返済に際しては、一般の旅行者が支払っていた旅行代金は、他の債権(たとえば運送会社やホテル等への支払)に優先して支払われるのでご安心ください(旅行業法17条2項)。
また、現在日本には、2つの旅行業協会があり、海外旅行を扱う旅行業者は日本旅行業協会に、国内旅行のみを取り扱う業者は同会または全国旅行業協会に加入することができます。これら旅行業協会加入の業者であれば、万一倒産した場合でも、協会が窓口となってくれるので払込金返済等の手続きが簡単で安心です。
さらに、日本旅行業協会では、旅行業者(ただし、海外主催旅行を取り扱う業者に限る)が取扱業務に応じた一定額を協会に預託しておき、倒産した際には前述の保証金制度に加えて、これも返済資金とする制度を設けています(ボンド保証制度・任意加入)。この制度に加入している会員と契約した場合は、海外旅行だけでなく、国内旅行も保証の対象となります。なお、各旅行会社の保証限度額については、業務内容や規模によって異なりますので、くわしくは、当該業者や旅行業協会に直接お問い合わせ下さい。
旅行者の側でも、ツアーの安さなどに目を奪われるだけでなく、その旅行会社や旅行代理店が旅行業協会に加入しているか、また、ボンド保証会員であるか否かなど確認して、納得したうえで契約しましょう。

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