法のくすり箱
Q、5年ほど前に、紳士録への登載用原稿であるとして、A興信所から私の履歴などを記した書面の送付を受けました。別に紳士録を買う必要はなく掲載料の類もいらないという説明でしたので、私はその原稿を校正して送り返しました。ところが、2〜3年前から、紳士録への掲載料を払ってくれと、毎月のように電話がかかってくるようになったのです。そこで掲載など不要だから取り止めてくれといったところ、それには掲載の抹消料が必要だと、あいかわらず電話による請求がやみません。ときには、社員を訪問させることをほのめかしさえしますが、私はまだ支払わずに頑張っています。どうしたらよいでしょうか?
A、 あなたが金を支払う必要はまったくありません。
一旦払っても、別の版の抹消料はまだであるなどと口実をもうけて、再度要求されて、いわばカモにされるおそれすらあります。
第一、あなたに金を支払えと迫っている業者は、最初のA興信所でしょうか。Aが名の通った興信所なら、こんな無茶はしません。悪徳業者は少なくなく、よくよく見るとA興信所とは別物の興信所だったりすることがあります。NTTの電話帳の広告と錯覚させて広告料を集める業者がいますが、A興信所の名簿を悪用する錯覚商法はここでも同様です。もし、一度でもお金を払ったときには、他の消費者被害と同様、いわば「カモ」として悪徳業者間に情報交換され、次々に魔手が伸びてくるということになりかねません。
この紳士録への登載やそれと表裏の関係にある登載の取消しは、「特定商取引法」で取締りの対象としている指定役務に含まれています。紳士録へ有料で登載するのであれば、業者はそのための契約書面を作成して顧客に交付しなければなりません(4・18条等)。さらに訪問販売や電話勧誘販売では、クーリングオフ(契約を8日間のうちに取り消す制度、9・24条等)などの適用もあります。また、電話で勧誘する場合にも、しつようにたびたび電話をしてはならないことになっています(再勧誘の禁止、17条)。
そもそも、あなたのケースでは、紳士録の買受けの契約も、掲載料を支払うという契約も、いずれも契約自体が成立していないのです。契約が成立していない以上、登載料の支払義務も当然ありません。また、あなたの氏名・経歴等は個人のプライバシーに関わることがらですから、あなたの意思に反して掲載すること自体許されるものではなく、抹消料など論外です。さらに、前述のとおり、しつような電話勧誘が違法であることはもちろんです。いずれにせよ、業者の言い分をのむ筋合いは一切ありません。
あなたの場合、すでに業者の電話には口頭での拒絶をされてこられたが、それが効き目がないとのことですね。それでは書状、それも内容証明郵便による拒否の通知はいかがですか。内容証明郵便を、弁護士を代理人として出すことができればなおよいかもしれません。また、業者の脅迫めいた電話を録音して、警察に持ち込むことも心得ごとです。いずれにせよ、毅然とした態度で臨まれることが一番です。

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