法のくすり箱
Q、私の家は木造の2階建てですが、最近、隣地に6階建のマンションがたち、このマンションから私の家の中の様子を見下せるようになりました。このため私の一家では、私生活を覗き見されているのではないかと、誰もがくつろげない思いです。プライバシー保護のための目隠しを、マンションに要求できないでしょうか?
A、もちろん、あなたは、隣地のマンション所有者に対し、目隠しを要求できます。
マンションのどの範囲にまで目隠しを要求することができるか。それは、見下しの程度などについての、マンションとあなたの家との、相互の具体的状況において判断されることになります。
たとえば、2階のベランダには目隠しを認めたが、3階のベランダには認めない(東京地裁平成5年3月5日判決)、3階から5階の窓に目隠しを命ずる(京都地裁昭和42年12月5日判決)、1階部分の窓は位置的にみて隣家の内部を観望できるので目隠しを認めるが2階部分の窓からは隣家の屋根がみえるだけなので認めない(東京地裁平成3年1月22日判決)など、ケースバイケースです。これらはいずれも、裁判になった観望制限の事例ですが、話合いで解決できればそれに越したことはありません。
ところで、目隠しの設置を求めるについては、立派な法的根拠があります。古くから、境界線より1メートル未満の近距離に他人の宅地をのぞくことができる窓を設けてはいけないとされてきました(民法235条1項)。また、近ごろは、覗き見されること自体がプライバシーの侵害となることを根拠に、他人のプライバシーを最低限度守ることができる程度の目隠しの設置が義務づけられるに至っています。
しかし、学説では一般に、隣家の家の中は見えないものの庭のみが観望されるようなケースでは、それだけで目隠し設置の請求まですることは、権利の濫用として許されないのではないかといわれています。
さて、設置を要求できる目隠しの構造・材質ですが、それが観望をさえぎるに足るものでなければならないことはもちろんです。材質として、不透明な塩化ビニール板・ポリエステル網入り樹脂板を可とした判例があります。また、窓にフィルムを貼るなどの措置もとりあえずの目隠しとはいえますが、窓を開ければ目隠しの用が果たせないので問題が残ることとなります。
なお、当然ながら、室内の窓のブラインドは、目隠しとはいわない次第です(東京地裁昭和61年5月27日判決)。

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