法のくすり箱
Q、私と亡夫との間には娘が2人(長女A・次女B)いますが、夫は生前に、長女の夫Cと養子縁組をしていわゆる婿養子としました。私の知らない間に手続がなされ、戸籍上に、私も亡夫とともにCの養親となっています。
ところが、夫が亡くなってしばらくしてCは強硬に長女と離婚してしまいました。その一方で、養子として亡夫の遺産相続を主張してきます。こんなことが許されるのでしょうか。許されるのであれば、私はCとの養子縁組を解消してしまいたく思いますが,どうすればよいのでしょうか?私の財産は、娘たちのために相続させたく、娘Aを見捨てたCにまでは相続させたくありません。
A、あなたの夫が死亡された時点で、夫の遺産相続は開始されています。したがって養子Cは、実子A・Bとまったく同一の権利で夫を相続します。その後、AとCとが離婚しようが、不仲になろうが、それはAとCの間の問題であり、あなたの亡夫とCとの養親子関係や相続関係は不変です。亡夫に遺言がない場合、法定の相続分は、あなたが2分の1、子供A・B・Cが各6分の1となります。
次に、あなたがCを離縁したいとの件ですが、任意の話合いがつけばもちろん可能です(協議離婚)。話合いがつかなければ、家庭裁判所の家事調停(離縁調停)を受けることになります(調停前置主義)。そこで調停がまとまれば調停離縁ということになりますが、不調の場合には、地方裁判所に離縁の裁判を申し立てることになり、そこで裁判離縁の事由に該当するかどうかが争われることになります。
離縁原因として民法は、
- (1) 他の一方から悪意で遺棄されたとき
- (2) 養子の生死が3年以上明らかでないとき
- (3) その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
を掲げています(814条)。
Cを養子にされたときの養親の気持ちには、娘AとCとが円満な夫婦であってくれることが大きな前提であったと思われます。たしかに、養子の離婚(A・Cの離婚)は、前記3)の離縁原因「その他縁組を継続しがたい重大な事由あるとき」を検討する上での要素となるものですが、判例は、それだけでは離縁原因とすることはできないものとしています(神戸地裁昭和25・11・6判決)。
養子Cに、さらに別に、養親に対する不孝や心外な行動がある場合に、種々勘案の上、離縁が認められる場合があるというところです。
なお、あなたが自分の遺産をCに相続させたくないという意向に添う次善の方策は、遺言書を作成し、あなたの遺産を全部C以外の者(A・Bなど)に遺贈してしまうことです。この場合でも、養子Cには遺留分があります。あなたの法定相続人は、A・B・Cの3人の子ですから、各人の法定相続分である3分の1の半分、すなわち6分の1がCの遺留分となります。Cが他の受遺者に申し立てれば、6分の1だけはCに渡ることになります。
最後に、あなたとCとの養子縁組が貴方の不知の間に亡夫によってなされている点ですが、同意をしていないあなたは、縁組の取消しを裁判所に請求できます。しかしながら、Cとの縁組を知ってから6ヶ月以内に取消しの請求をしなければならないこととなっており、おそらくあなたの場合は、この方法によることはできないものと思われます(民法796条・806条の2)。

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