法のくすり箱
Q、ギャンブルにのめりこみ、あちこちのサラ金業者への返済に悩んでいた息子が、先日、蒸発して行方不明になっています。そして業者の社員という男が、何度も息子の妻や別居している父親の私に、息子の所在を尋ねる連絡をしてきました。そして最近、業者から私に対し、親としての道義的責任を果たすべきだと支払を要求してきました。このような行為は許されるのでしょうか?
A、息子さんの借金は、法的には、あくまで息子さんの責任です。息子さんの妻も、親族である父親も、支払う責任はありません。
そして、貸金業規制法は、設例のような、(1)息子さんの所在を何度も尋ねる連絡、(2)支払義務のない妻や親族への支払要求、をいずれも認めていません。貸金業規制法21条1項によれば、「貸金業者(貸金業を営む者)又は貸金業者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって、人を威迫し又は……人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない」とし、その違反に対して、1年以内の業務停止処分や刑事罰(2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、併科もあり)を科しています(同法36・48条)。
上記(1)の、業者が「何度も」息子さんの所在を尋ねてくる件ですが、そのような口実のもとで、実質上は、息子さんの妻や親族に対して事実上の支払いを求め、困惑させる行為にあたると考えられます。また上記(2)については、道義的責任を果たせという要求は理不尽なものであり、人の私生活の平穏を害するような言動により人を困惑させることになると考えられます。
したがって、業者の行為は許されることではなく、妻や親族は、違法行為であると、毅然とした態度で拒絶することが大切です。あまりに執拗な場合には、業者を警察へ告訴することも、都道府県の金融課に連絡して業者の処分を求めることも、もちろん可能です。
なお、財務省通達では、貸金業者がしてはならない取立行為として、次のような行為を指定しています。また、平成16年からは、貸金業規制法が改正され、法文中にも違法行為の例示がなされています。
<貸金業者等がしてはならない取立て行為>
1 債務者・保証人等を威迫する次のような言動
- (a) 暴力的な態度をとること。
- (b) 大声をあげたり、乱暴な言葉を使ったりすること。
- (c) 多人数で押し掛けること等。
2 債務者・保証人等の私生活又は業務の平穏を害する次のような言動
- (a) 正当な理由なく、午後9時から午前8時まで、その他不適当な時間帯に、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。
- (b) 反復又は継続して、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。
- (c) はり紙・落書き・その他いかなる手段であるかを問わず、債務者の借入れに関する事実、その他プライバシーに関する事項等をあからさまにすること。
- (d) 勤務先を訪問して、債務者・保証人等を困惑させたり、不利益を被らせたりすること。
3 その他、債務者・保証人等に対する次のような行為
- (a) 他の貸金業者からの借入れ又はクレジットカードの使用等により弁済することを要求すること。
- (b) 債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知、又は、調停その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること。
4 法律上支払義務のない者に対し、支払請求をしたり、必要以上に取立てへの協力を要求したりしてはならない。
5 その他正当とは認められない方法によって請求をしたり取立てをしたりしてはならない。

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