法のくすり箱
Q、自宅に届いたハガキの「すぐ融資」「電話で振り込み即OK」という言葉にひかれて電話をし、お金を借りました。ところが、ハガキにあった利率とは違って、実際にはあまりに高利で、あっという間に借金が膨らみ、支払いが滞るようになりました。すると、債権者は親戚の職場にまで取立てに来るのです。どうすればよいのでしょうか?
A、今、いわゆる「ヤミ金」が激増して大きな社会問題になっています。これら「ヤミ金」に共通しているのは、年29.2%の法定利息を超える高金利(ときには1000%を超すことも)と、脅迫的取立(脅迫・恐喝等)をすることです。
「ヤミ金」の形態は実にさまざまです。貸金業の登録がある者、登録も店もなく携帯電話だけで商売するいわゆる090金融。このほか、貸金という形すらとらないものが多数あります。たとえば、小切手を切らせるシステム金融、金券ショップに各種チケットを売却させるチケット金融、クレジットカードで購入させた商品をすぐに売却させる業者、自宅の家具等を買い取ったことにしてリースするリース金融……あの手この手で、形態には際限がありません。また、電話でしつこく「金を借りてほしい」と勧誘する“押貸し”さえあります。
こうした「ヤミ金」は、他の金融機関から融資を受けられない多重債務者や破産経験者など、法的に困っている者を主なターゲットにしており、暴力団の資金源の一つともなっています。
「ヤミ金」の行為は明らかに違法な犯罪行為です。
貸金業規制法では、無登録営業は5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(11条1項・47条2号、併科もあり)、書面不交付は1年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(17条・48条4号)、威迫や生活・業務を妨害する違法な取立は2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(21条1項・47条の2、併科もあり)と定められています。また、出資法では、金銭の貸付を業とする者が、年29.2%=日歩8銭を超える高利の支払いを要求するだけで、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処せられます(5条3項、併科もあり)。
さらに、脅迫的な取立は、刑法の脅迫罪(222条、2年以上の懲役または30万円以下の罰金)・恐喝罪(249条、10年以下の懲役)・監禁罪(220条、3月以上5年以下の懲役)・暴行罪(208条、2年以下の懲役・拘留もしくは30万円以下の罰金・科料)などにも該当します。
各地の弁護士会では、このような悪質な「ヤミ金」は犯罪行為であり、断固たる措置をとることを決定しています。
すなわち、高利の消費貸借契約は公序良俗違反で無効であり(民法90条)、借りた金銭は不法原因給付(民法708条)なので返還の義務はなく、「ヤミ金」から借りた金銭は返済する必要はありません。このことは最近の判例でも認められています(東京簡裁平成14年4月9日判決)。さらに、貸金業法も改正されて、平成15年9月1日からは、年109.5%を超える金利の契約は無効であり、利息については一切支払う必要はないと、法律で明文化されました(42条の2)。
逆に、「ヤミ金」に支払った金銭を不当利得(民法703条・704条)として返還を求めることもできます。判例でも、少なくとも、受け取った金額と支払った金額の差額については返還が認められています(東京地裁平成13年9月26日判決)。
さらに、全国的に「ヤミ金」の刑事告訴・告発が行われ、すでに5000以上の業者が告発されました。
あなたの場合も、「ヤミ金」に返済する必要は一切ありません。一人で悩まずに、とにかくお近くの法律事務所を訪ね、早めに対処することです。取立がひどいときにも、あなた自身、脅迫等に屈しないという断固とした態度で臨むことが肝要で、必要に応じて警察にも協力を要請しましょう(その際、電話のやりとりや取立の状況など証拠となるものを収集しておくことは有効です)。
(「不法原因給付」「不当利得」についてはことば欄参照)
〜ことば欄〜
- ☆不法原因給付・不当利得
- たとえば、殺人を依頼して支払った金銭や賭博に負けて支払った金銭のように、不法な原因に基づいた給付を「不法原因給付」とよび、これを受け取った者には法的に返還の義務はない。
- 一方、たとえば、拾った物を勝手に使っていても持主が現れたら返す必要があるように、法律上の権利もないのに、他人に損失を及ぼして利益を受けた場合、その利益は「不当利得」とよばれ、これは当然、損失者に返還しなければならない。もし受益者に悪意があったのであれば、利益に利息をつけ、さらに損害がある場合には損害賠償責任も負うことになる。

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