Ａ、民法の規定では、たしかに、あなた方子供４人が法定相続人であり、遺産の４分の１ずつを相続することになります（９００条）。
　しかし、共同相続人の中に、妹さんのように、生前贈与などを受けた者がいる場合は、そうした部分を考慮したうえで平等に分割できるよう、特別受益の制度があります。（９０３条）
　特別受益とは、

• ａ　遺贈（遺言でとくに遺産を残してもらった）
  
• ｂ　婚姻・養子縁組のための費用（結納金・支度金・持参金等など）
  
• ｃ　生活に必要な費用（たとえば、不動産や不動産購入のための資金、営業資金、学費などが含まれる）
  
をいい、ｃの生活に必要な費用は広く認められていますが、おこづかいや、お祝いに着物を買ってもらったなどは、基本的には含まれません。
　こうした特別受益を受けた者がいるケースでは、相続財産の中にこれらとくに贈与を受けた金額を加算して、改めて配分しなおすことになります。その際、特別受益の額は、どんなに昔に贈与されても、相続開始時点での評価額で計算されます。
　さて、妹さんの場合は開店準備費用を出してもらっているので、その費用は当然特別受益とみなされ、この額を足した遺産の総額を４人で分割した額が、１人あたりの相続分となります。
　こうして計算した本来の相続額より、妹さんがもらった開店資金の方が多ければ、遺産はあなた方残りの３人で平等に分けることになります。といっても、妹さんは超過分を返還する必要まではありません。これは被相続人の意思を尊重するためです。
　しかし、あなたを含め他の３人の遺留分を侵害するほどの額を、妹さん１人で受け取っていたのであれば、あなた方３人は、妹さんに対して、遺留分相当額の請求をすることができます（１０３１条）。
　この権利の行使には、意思の表示があればよく、必ずしも訴えが必要ではありません。しかし、話し合いで決まらないときには、妹さんの住所地を管轄する家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになります。
　以上が、法定相続についての考え方です。もし、これでは不満だとお思いなら、次の２つの方法があります。
　まず、妹さんに納得してもらえるなら、家庭裁判所に、相続放棄の手続きをとることができます（９３８条）。そうすれば、妹さんを除いた３人で遺産を分けることになります。
　それがだめなら、お母様に、妹さんへの生前贈与を考慮した内容の遺言書を、きちんと作成しておいてもらうことです。ただ、その内容が妹さんの遺留分を侵害するものなら、当然、妹さんにも遺留分相当額を請求する権利はあります。

☆　遺留分　☆
　「遺留分」とは、法定相続人のうち、配偶者・子供・親に確保されている一定の相続分のこと。配偶者・子供については法定相続分の２分の１が、親の場合には３分の１が、それぞれ遺留分として定められている（１０２８条）。もし、現実の相続分がこの遺留分に満たない場合には、他の相続人に対して、遺留分に足りない部分を請求することができる（遺留分減殺請求）。
　なお、被相続人の兄弟姉妹には、この遺留分は認められていない。

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