
法のくすり箱
Q、私は借家住まいをしていますが、トイレが汲取り式でかなり傷んでいたので家主に無断で水洗式に改造しました。この改造費は家主に出してもらえるのでしょうか?
A、建物の賃借人は、建物に加えた費用を賃貸人に返してもらうことができるので(賃借人の費用償還請求権、民法608条)、あなたの場合も改造費を家主に出してもらえます。ただ、この場合の費用ですが、建物の保存上通常必要な費用(必要費)になるか、あるいは、建物の価値を増加させるために使われた費用(有益費)になるかによって返還方法が違ってきます。
では、具体的にどのような場合がそれぞれに相当するのか、例をあげてみると、まず必要費としては、屋根の葺替え費・塀の修理費・壁の塗装費・下水排水施設の修理費などがこれにあたり、有益費としては、窓のない部屋を明るくするためにガラス窓をつくった費用・暖房用ボイラーを取付け各部屋にスチーム施設を施すのに要した費用・板塀をセメントまたは石塀などにしたため要した費用・部屋の壁をベニヤ板できれいに改装した場合の費用などが考えられます。
あなたの場合は、建物の保存上必要だったわけではなく、より快適に効用も増すようにと水洗式に改造し、その結果、建物の価値を高めたわけですから、明らかに有益費にあたります。
そこで返還方法ですが、必要費の場合は支出後ただちに費用の全額を請求することができますが、有益費の場合は賃貸借契約が終了したときはじめて請求することができ、しかも請求額は、費やした全額か増加した価値の評価額のどちらかを家主の選択に従って請求することになります(民法196条2項)。ただし、1年以内に行使しないと権利がなくなることに留意して下さい。
また、家主に無断で改造したということですが、同意の有無は何ら法律的問題を生じませんので心配する必要はありません。

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