法のくすり箱
Q、私はレンタルビデオを5本借りてうっかり返し忘れていたところ、半年たってビデオ店の人が訪ねてきて、借りたビデオ5本の返還に加えて、1本当たり1日240円の延滞金を払えというのです。1日の延滞金は240円×5本の1200円で、半年では21万円以上にもなります。ビデオ店の人はこれまで何度か電話したが留守だったといいます。確かに私も出張がちなことは事実ですが、もっと早く催促の電話を受け取っていたら早く返せたのです。どうしたらいいでしょうか?
A、ビデオ店としても、半年間5本のビデオを遊ばせてしまい、商品価値も落ちているわけですから、これらをレンタルにまわせていれば得られたであろうところの利益に相当する額は是非払ってほしいところでしょう。
今、全国のビデオ店は6000軒を超えていますが、利用者との標準的な契約書があるわけではありません。延滞料についてはビデオ店が自分の決めた金額を一方的に請求してくることになります。ただ、あなたはそのビデオ店から、会員になるとき延滞金(多くは店内に掲示している)を承知で入会したはずだといわれるかもしれません。
残念ながら、この部分は、まだ法的に整備がなされていない領域なのです。あなたとしては、自分が悪意ではなかったことなど事情を話して、誠意をもってビデオ店の人と交渉し、どこかで折り合ってください。
その際には、ビデオの代金、それをレンタルして得られたであろう利益額は交渉にあたっての一つの手掛かりです。また、利息制限法の上限金利(10万円未満の場合年20%)、出資取締法の上限金利(年29.2%)も、貸金や延滞金の利率の制限として参考になります。
ちなみに、各地の消費者センターなどでは、相談に来た消費者が善意の場合(督促されても放置して返さなかったり、最初からビデオを取り込むつもりで住所・氏名など虚偽の申告をした人などは別)には、ビデオの代金相当額をビデオ店に支払うことでの和解をすすめているようです。しかし、この解決には法的根拠はありません。
あくまで延滞金全額を支払えと請求されたときは、調停や裁判に進むことになります。その際にも、権利の濫用(民法1条)・公序良俗違反(同90条)の考えにより、裁判所が適切な和解をすすめてくれます。しかし、和解がととのわず、判決までいくとすれば、その事情いかんにより、あなたに相当高額の支払いが命ぜられる可能性も絶無ではありません。
いずれにせよ、どの段階でも、話合いのできる機会をせばめることなくじっくり対応されてはいかがでしょう。

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