法のくすり箱
Q、私は小さな株式会社の大株主!?で、その会社の約10%にあたる株式をもっています。経営には直接関与していませんが、株主総会の場合には、私の株が過半数を左右するキャスティングボートとなるときがあります。このため、会社は、私に大変気をつかってくれます。ところが、最近、会社が増資をして、新株を全部、第三者に割当てるという話が伝わってきました。それでは、私は、現在の持株比率を維持することができず、私の持株がキャスティングボートにならなくなります。いったい会社は、株主総会にはかることなしに、新株を発行できるのでしょうか?また、従来の株主以外の第三者に新株を割当ることが可能なのでしょうか?
A、あなたは、会社の定款をご覧になったことがありますか。
定款に、「新株の引受権は株主に与える」旨を規定している場合には、あなたをさしおいて第三者に新株が与えられることはありません。
しかし、定款にそのような定めがない場合には、会社(取締役会)は、株主に新株を割当てることをしないで、第三者に引受権を与える新株の発行を決定することができます。その結果、10%もあったあなたの持株比率が、7%・6%と下がる結果になっても、文句をつけることができません。
ただ、第三者に対し、「特に」有利な(時価より2割程度以上安い)発行価額で引受権を与える新株を発行するときには、株主総会の特別決議(株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が出席して、議決権の3分の2以上の多数決で決議する。商法342・343条)が必要です(商法280条の2第2項前段)。あなたとしては、当然、株主総会に出席して、そこで反対されることです。しかし、その結果、第三者にとくに有利でない価額で発行することに是正されれば、第三者にだけ新株がいくことを止めることはできないのです。
また、さらに、あなたの会社の定款に「株式の譲渡は取締役会の承認を必要とする」旨を定めている場合(いわゆる閉鎖的会社)には、原則として、第三者には新株を割当てることができず、あなたのような株主にのみ新株引受権が与えられることになっています。ご確認下さい(株主の持株比率維持の利益を保護、商法280条の5の2本文)。
しかし、この場合も、株主総会の特別決議(前出)によって、第三者に新株引受権を与えることができることとしています(同条但書)。あなたとしては、特別決議が成立しないように、株主総会に出席して出席者の議決権の3分の1以上をとりまとめて反対されることが必要です。

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