法のくすり箱
Q、私には、親から相続したいわゆる「2戸1」(2戸が1棟になった建物)の貸家があります。すっかり老朽化が進み建て替えたいと考えていた矢先に大きな地震がありました。東側の1戸は大きく損壊し、借家人は立ち退いてくれました。ところが西側の1戸もかなり損壊したのですが、借家人は私に無断でさっさと補修工事をして住み続けています。東側の1戸を修補するのは経済的にも困難で、かといってこのままでは東側の1戸は利用できず、台風などの際の倒壊が危惧されます。何とかならないものでしょうか?
A、建物の賃貸借契約は、建物が滅失または朽廃したときには終了します。このことは、民法や借地借家法に直接規定はされていませんが、滅失や朽廃により、家主は建物の賃貸が不能となるので、当然、賃貸借は終了となるのです。
そしてこの判断は建物に即して行われ、通常の修繕で足りるか、建物全体に朽廃があるかなど、細かく検討されます。老朽化が進んでも、どのくらいになれば朽廃になるのかについては、判例は一様ではありません。修繕すればなお数年はもつというケースでは、判例は朽廃を認めていないなど、傾向としてはやや厳しい態度をとっています。
そこであなたの場合のような2戸1棟の建物で、その1戸はまったく使いものにならない状態であれば、あなたは西側の1戸の借家人に契約の解約(旧借家法1条の2・3条、借地借家法27・28条)を申し出られてはいかがでしょうか。これには貸主側に正当の事由が必要で、しかも、解約の6ヶ月前に解約の申入れをしなければなりませんが、あなたは、おそらく、(1)東側の1戸の損傷の重大性、(2)2戸1棟の建物の倒壊等の危険性、(3)西側の1戸の修理に家主の了承がなかったこと、(4)建物の除却による敷地利用の社会的合理性などを主張されることになります。
さて、借家人が任意に解約に応じない場合には、やむを得ません。裁判(解約に伴う明渡請求訴訟)について、法律事務所等に相談なさって下さい。判決では、いくらかの立退料の支払を条件にして、解約・明渡しを肯定するものが少なくありません。
なお、借家人との契約が平成4年8月1日以前からのものなら旧来の借家法が適用され、それ以降の契約なら現行の借地借家法が適用されます。とはいえ、借地借家法は、旧借家法の正当事由の判断基準を具体的に明文化(28条)したにすぎませんから、どちらが適用されても同様に考えて差し支えありません。

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