法のくすり箱
Q、私はこのたび妻と死別しました。私と妻との間には子供はありません。結婚したときに先方から望まれていわゆる婿養子になり、妻の両親と養子縁組をしたのですが、すでに妻の両親も亡くなっています。私は、妻の生前から妻の姉夫婦とまったくそりがあいませんでした。そこで妻が亡くなったのを機に、この姉夫婦とのつきあいを断ち、法的にも完全な他人になりたいのですが、どのようにすればよいでしょうか?
A、亡くなった奥さんのお姉さん夫婦と法律上も縁を切りたいとのお話ですが、まず、あなたの結婚によって生じた親族としての関係(姻族関係)は、あなたの意思表示だけで終了させることができます(民法728条2項)。すなわち、夫婦の一方が死亡した場合において、生存した方の配偶者は、姻族関係を終了させる意思表示を市役所や町村役場に届け出ることができ、その届出によって親族関係は消滅するものとされています(戸籍法96条)。
しかし、あなたは奥さんの両親と養子関係にあり、このため、あなたは奥さんの姉さんとも法定の血族関係が生じています。この関係は、養親が死亡していても変わりません。そこで、養親の死亡の後にも養子縁組の離縁ができるかどうか。さいわい法律は、養親または養子の一方が死亡した後においても、生存者の側(本件ではあなたの側)から離縁を求める途を開いています。家庭裁判所の許可(民法811条6項)を得ることができれば、死後離縁が認められ、これによって問題の姉夫婦を含む一切の親族関係が終了します(民法729条)。
さて、死後離縁の許可はあなたの住所地の家庭裁判所の管轄で行われます(家審規64条)。許可の基準は、(1)養親の死後に養親族関係の効果が不当に養子を拘束することを防止し、また、(2)養子の自分勝手な理由の離縁を防止することにあるとされています。
あなたと他の養親族との関係は、上の基準に照らしてどうなのでしょうか。離縁を望むのがもっともとされるだけの理由を添えて申し立てるのであれば、家庭裁判所もその事情を考慮してくれて許可されるのではないでしょうか。

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