法のくすり箱
Q、お恥ずかしいことですが、ギャンブルなどでサラ金業者数社に多額の借金をしてしまいました。そのうえ、最近返済が滞り気味になっていたところ、そのうちの一社から「このままだと裁判を起こして判決をとり、給料を差し押さえる」と言われ、生活できなくなるのではと心配でたまりません。また、そうなれば会社にも借金を知られてしまい、出世にもひびくのではと気掛かりです。どうすればよいのでしょうか?
A、サラ金業者の側に判決や公正証書などがあれば、それに基づいてただちに給料を差し押さえることができます。しかし、給料が差し押さえられるといっても、生活していくのに最低必要な部分については、差押えはできないことになっています。
具体的には、月給制の場合には、給与所得(基本給及び諸手当、ただし通勤手当は除く)から所得税・住民税・社会保険等を除いた額(いわゆる手取額)の4分の1は差し押さえてもよいとされていますが、それ以外は差し押さえられません。ただし、この手取額が28万円を超えるときは、21万円だけ残してあとはすべて差し押さえられることになります。
なお、退職金については先の税金等を控除した手取額の4分の1が差押え可能ですが、残額はやはり差し押さえられません(民事執行法152条、施行令2条)。
ちなみにあなたが、複数のサラ金業者から差し押さえられた場合でも、トータルで先の額以上を差し押さえられることはありません。差押えには、差押えを受けた者に対して最低限必要な生活を維持させるためのルール(制限)があるわけです。
さらにこのほか、健康保険・国民年金・失業保険・災害補償・生活保護や恩給といったものについては、最低の生活の保障として、その全額について差押えが禁止されています(健康保険法68条など個別法で禁止)。
とはいっても、残額では生活するのに精一杯で、住宅や車のローン・生命保険料なども支払えず手放すことにもなりかねません。また、ご心配のとおり会社に借金を知られることにもなります。
サラ金業者はこれから裁判をするとのこと。それでは、差押えに必要な判決をとるのに多少の時間がかかります。そこで、今、この段階で、あなたは債務整理や場合によっては自己破産といった手続きをとり、根本的に解決することを検討すべきです。法律事務所や最寄りの役場などでの法律相談を訪ねてみてください。債務整理や自己破産の手続きなら、勤め先の会社に通知がいくようなこともありません。差押えがなされ、なりゆきで会社をもやめざるを得ないような事態が生じてからでは遅いのです。

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