
法のくすり箱
Q、A株式会社と売買契約を結び、品物を相手に引渡しましたが、約束の期日になっても代金を支払ってくれません。最近、A会社の業績が悪化しているとの噂もあり心配です。この場合、A会社の代表取締役である甲個人にも支払を請求できないでしょうか?
A、株式会社と代表取締役個人とは全く別個の法的人格を有しており、代表取締役は会社の機関として行為しているにすぎず、原則として代表取締役個人が会社とともに支払等の責任を負うことはありません(ただし、取締役がその職務を行なうにつき悪意又は重大な過失があったときには取締役が会社とともにその責任を問われることがあります(商法266条の3)。しかし、実際にはその責任の所在は、訴訟により明らかにすることになりますので手間がかかります。)
したがって、会社の資力や先行きに不安を覚える場合には取引にあたって、代表取締役個人に連帯保証人として署名捺印してもらうのが賢明です。
ところで、(1)会社財産と個人財産とが混合され、(2)業務活動や収支の面でも、会社と個人とが混同されたまま継続されており、(3)株主総会や取締役会などが開催されないような場合には、会社形態をとっていても実態は個人に他ならないとして、個人の責任が問われることがあります。
また、この他、ある商品の製造をしないと約束した者が、別に新会社を設立して、約束で禁止された行為を行なうなどのように、法人格を濫用して法や契約を骨抜きにする場合にも、会社の行為を個人と同一視することによって、責任を問う場合があります。
このような取扱い(法人格否認の法理)は、昭和44年の最高裁判例以後、ほぼ確立されていますが、実際にその適用を受けるには、なかなか困難な問題があるので、専門家に相談した方がよいでしょう。
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