
法のくすり箱
Q、夫がサラ金で金を借りました。先方からの矢のような催促に、妻はノイローゼ気味です。妻もこの支払に応じなければならないのでしょうか?
A、民法は夫婦の資産に関し、夫婦の一方が婚姻前から有している財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、それぞれの個人財産となる旨を定めています(762条1項)。利益も不利益もそれぞれが別々に負担するという制度を取っているのです。
したがって一般的には、妻は夫の借金を支払う義務はありません。
ところで、この場合、夫の借金が競馬とか、自分の飲み代などの場合ならともかく、家族の生活費用にあてるため借りたものである場合も同様でしょうか。
民法761条は、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と取引をし、これにより債務を負担した場合には、夫婦は連帯して責任を負う。」と規定しています。
では、「日常家事債務」とはいかなるものをいうのかの点ですが、「借金」に関しては、概ね1ヶ月の夫婦の生活費の額が基準となり、その額を越える借金は、借金の目的を考慮することなく、日常家事債務にあたらないとするのが判例であり、そのような額の場合には、妻は支払を拒絶できます。
この他、「食料品・衣服類の買入れ」「家賃・光熱費の支払い」「家具調度品の購入」「家族の医療・保健・娯楽費の支出」「子供の教育費・養育費」など家庭生活の維持運営上の必要からなされた支出がこれに含まれます。
しかし、これらの支出でも夫婦の現実の生活状態(資産・収入・社会的地位など)のいかんによって、ある場合には日常家事債務になり、ある場合にはこれにあたらないといった場合が生じます。
従って、「テレビ」「車」「毛皮」などを買った場合でも、個別的具体的に判定されることになります。 そこで、具体的な事例の判断にあたっては、相手の生活程度その他をよく考慮し、常識的な判断を働かせることが肝要です。

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