1999年3月1日
対人地雷全面禁止条約発効
この地球上から
対人地雷による悲劇を一掃するために!



 本年(1999年)3月1日、対人地雷全面禁止条約が発効します。

無差別・苛酷な殺傷兵器、対人地雷

 この地球上には、1億1千万個以上の対人地雷が埋設されています(下表)。そしてこの対人地雷による死傷者は、毎月毎月2000人以上にものぼっています。

対人地雷の埋設状況
(1996年4月10日現在:国連地雷除去データベースより)
地雷埋設国/地域 個 数 備    考
エジプト
イラン
アンゴラ
アフガニスタン
カンポディア
中国
イラク
ベトナム
クロアチア
ボスニア・ヘルツェゴビナ
モザンビーク
      :
23,000,000
16,000,000
15,000,000
10,000,000
10,000,000
10,000,000
10,000,000
3,500,000
3,000,000
3,000,000
2,000,000
  :   


国連が除去活動を実施中
国連が除去活動を実施中
国連の協力で除去活動を実施中



国連が除去活動を実施中
国連が除去活動を実施中
国連が除去活動を実施中

合      計
111,738,377  


 地雷で命を失うのは兵士だけではありません。その犠牲者の約20%が15歳未満の児童なのです(1996年赤十字国際委員会)。全世界ですでに25万人以上の負傷者がいると推定され、こうした負傷者は他の原因による負傷に比べ2〜6倍の輸血を必要とし、たとえ命が助かっても手足を失うなど深刻なハンディを負うこととなります。
 しかも地雷の脅威は戦争のときだけではありません。ようやく平和な時代がおとずれても、一度埋設された地雷は、普通の生活のすぐ横でいつまでも人命を無差別に脅かしつづけ、戦争からの復興立ち直りの大きな障害となっています。
 さらに近代化された地雷は、埋設されてしまえばその発見はきわめて困難で、しかも除去作業には大きな危険が伴い、1000〜2000個の地雷を除去するごとに1名の犠牲者が出ているのです。

人類の英知−−国際人道法に立脚して

 1996年秋、カナダ政府により対人地雷に関する国際会議(オタワ会議)が開かれ、可能な限り早期に対人地雷禁止の国際合意を成立させるべく宣言がなされました。そして翌年9月18日、「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(対人地雷全面禁止条約)が採択されたのです。
 たとえ戦争とはいえ、その方法・手段は無制限には許されず、過度の傷害や無用の苦痛を与える兵器や戦闘方法は禁止され、また文民と戦闘員は区別されねばならないという、国際人道法の原則を確認し、そのうえに立って、対人地雷の全面禁止が決められたものです。
 昨年11月20日現在の署名国は131ヶ国、締約国は52ヶ国となっています。日本は45番目の締結国となり、この条約は本年3月1日をもって発効することとなりました。

犠牲者ゼロをめざして、できる限りの努力を

 締約国は、たとえいかなる場合でも、対人地雷を使用・開発・生産・取得・貯蔵しないこと、また、こうした禁止事項を行おうとする者を援助・奨励・勧誘する行為もしないこと、そしてすべての対人地雷を廃棄することを約束するものです(1条)。
 唯一、地雷の探知・除去・廃棄のための技術開発や訓練のために絶対に必要な最少限度に限って、対人地雷の保有・移譲が認められているにすぎません(3条)。
 締約国は、自国が貯蔵・保有する対人地雷を条約発効後4年以内に右の例外をのぞきすべて廃棄することが義務づけられます(4条)。
 また、自国内に埋設された対人地雷については、その地域の特定のためあらゆる努力を払い、地雷源に人が近づかないよう危険地域を明示したり監視したりしたうえで、発効後10年以内に除去・廃棄することが義務づけられました(5条。どうしてもやむを得ない場合に限り最長10年の期間延長が認められることもある)。
 対人地雷の除去・廃棄のために、また地雷による被害者を支援するために、締約国はできる限りの国際協力を惜しまず、技術・情報・人材・資材・金銭上の援助を提供することも明記されています(6条)。

透明性を確保し実行力ある運用を

 条約を実質的なものとするには、透明性を確保する必要があります。
 このため、締約国は条約発効後180日以内に国連事務総長に対して報告書を提出しなければなりません。自国内の対人地雷の数量、敷設地域の場所や数量、廃棄のための計画やその現状、自国で生産・所有する対人地雷についてはその技術上の特徴(識別・除去が容易になるよう)などがその報告には含まれ、その後、毎年4月30日までに新たな報告をすることが義務づけられています(7条)。
主要な地雷埋設国における被害率
(1996年赤十字国際委員会のデータより)
国  名 被 害 率
カンボディア
アンゴラ
ソマリア
ウガンダ
ベトナム
モザンビーク
1/236人
1/470人
1/650人
1/1100人
1/1250人
1/1862人

 もしこの条約の遵守に疑義が生じた場合には、当該締約国に対してまず説明を求め、問題が解決しないときには、締約国特別会議を招集したり、専門家で組織される事実調査使節団が設置されることもあります。事実調査使節団は当該領域に出向き必要な情報を収集し、当該国はこの調査に協力するためあらゆる合理的な努力を払うことが義務づけられています(8条)。
 さらに、条約の適用・実施の状況や問題点を協議するため、最初の5年間は毎年定期的に締約国会議がもたれることになりました。また発効後5年たった時点で検討会議をもって、さらにその運用について検討することになっています(11・12条)。
 なおこうした会議には、締約国以外の国や、国際連合、その他国際機関・地域的機関、赤十字国際委員会ならびに非政府機関も広くオブザーバーとして参加する道が開かれています。

国内法制定により厳罰を規定

 対人地雷全面禁止条約を締結するに際して、国内法である「対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律」も制定されました。
 この法律により、対人地雷の製造は例外なく禁止され(法3条)、もし、対人地雷を製造したり、あるいは製造しようとしたり(未遂)、みだりに所持すれば、7年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます(法22・23条)。さらにこれらの罪は、たとえ国外で行われた場合でも処罰の対象となります(法24条)。
 所持については、条約で認められた目的(探知・除去・廃棄のための技術開発と訓練)に限り通商産業大臣の許可を得て、きびしい規制のもとに可能なほかは一切禁止されることとなりました(法4〜15条)。
*  *  *

 自衛隊は、迎撃用の主力兵器の1つとして現在約100万発もの対人地雷を貯蔵しています。当面、そのうち約22万発が平成11年度中に廃棄されます(費用4億円)。一方、これまで対人地雷は防御用兵器としては比較的安価で一定の効果があると評価されてきたため、廃棄に伴う代替兵器の検討が併行されることになるということです。
 ところでアメリカは、朝鮮半島での例外的使用が認められなかったため対人地雷禁止条約に調印していません(代替兵器の開発が完成することを前提に2006年までに調印する方針を示している)。そのため、在日米軍基地はこの条約の制約を受けません。しかし、日本政府の要請により、日本国内では「貯蔵」と「保有」以外の禁止項目は行わないことに合意しているのが現状です。




ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(美術品公開法の制定)に進む